リップシャッツ 信元 夏代
アスパイア・インテリジェンス社 代表取締役

 新年初回の今回は、筆者が共著者の1人として執筆した書籍『The Success Blueprint』のテーマともなっている「成功」について少し考えてみたいと思います。前回もお知らせしましたが、この書籍は世界的に著名なトレーナーでありスピーカー、そして70冊以上のベストセラー著者のブライアン・トレーシー氏をはじめ、ビジネス有識者たちと出版したもので、筆者は第3章の「Two Little Words That Will Transform You」を執筆しています。

成功を阻害するものは何か

 あなたの成功を阻害するもののナンバーワンは何でしょうか? 経験不足、知識不足、資金不足、ネットワーク不足、タイミング、不安……。いろいろな要因があることでしょう。でも実はこれらの理由は、「ナンバーワン」の理由ではないのです。筆者の初めての留学体験でのエピソードをご紹介しましょう。

 筆者が早稲田大学3年生の時。比較的恵まれた環境に育った筆者でしたが、「ぬるま湯」にいてはいけない!外の世界を見なければ!!と意気揚々と交換留学プログラムの試験を受け、見事合格。アメリカはセントルイス市のワシントン大学への1年留学が決定しました。

 すでに英語は「そこそこ」できていました。中学1年生から毎日欠かさずNHK基礎英語をラジオで聞いていた筆者は、大学の時にはNHKビジネス英語を聞くようになっていました。放送時間に帰宅できない時には母に頼んで、カセットテープに録音してもらったものです。そうです、ラジオとテープレコーダーが一緒になった、卓上のあれ、が大活躍していた時代でした。大学の近くの高田馬場駅前の英会話学校にも週2回通い、トップレベルのクラスにいましたし、大学でも、筆者が留学予定だったワシントン大学からの交換留学生、クリスティーナと仲良くなり、そこそこ会話は問題なくできていました。

 渡米した日のことは未だに忘れられません。セントルイスの空港に、クリスティーナとボーイフレンドが迎えに来てくれ、これから1年間過ごすことになる学生寮まで送り届けてくれました。1年生なら通常、2人部屋を与えられますが、筆者は新入生とはいえ、大学3年生の留学生だったため、個室を頂くことができました。

 しかし、部屋のドアを開けた瞬間、サメザメと泣けてきてしまいました。部屋は4畳半くらいの大きさで、ベッドシーツも何もないメタルフレームのシングルベッドが1つ、メタルフレームの机が1つ、それと小さなクローゼット。それだけです。バスルームは男女共用で、カーテンを閉めるだけの小さなシャワーブースが3つ、並んでいます。私はとんだ勘違いをしていたのではないか……ここでどうやって1年間暮らせというのか……?!

 さらに、筆者のフロアは1〜2年生のフロアでした。18〜19歳のヤングアメリカンたちが廊下にあぐらをかいて座り、リンゴを丸ごとかじりながらものすごいスピードでしゃべりまくっているわけです。それだけですっかりおじけづいてしまいました。

 「そこそこ」できると思っていた自分の英語力への自信は一気に崩れ去りました。それどころか、スピードに追いつけそうになくて怖くて話しかけることもできない。でも話さないと上達しない。でも口を開けた瞬間「そこそこ」の英語がバレてしまって恥ずかしい……そんな負のスパイラルに急速に陥っていきました。

 そしてそれは英語力だけの問題ではなく、社交力を含め、自分の弱みが急に明るみにさらけだされ、それはあたかも素っ裸で鏡張りの部屋に閉じ込められたかのような気持ちになり、2日に1回は部屋にこもって泣く毎日がしばらく続きました。

 そんなある日、フロアのパーティーがあると知らされます。お酒を飲みながら同年代のアメリカンたちとわいわいはしゃぐなんて、なにがなんでも逃げ出したい。部屋を閉め切り、留守を装っていようと考えました。そそくさと人混みをかき分け、自分の部屋に戻ろうとしたその瞬間です。

 1年生の男の子ネイトが私の腕をつかみ、引き留めます。彼はすでにビールを何本空けたのか? という状態になっており、ルームメートのイーサンに抱えられている状態でした。彼が私に向かってこう言ったのです。
「君はなんでいつもそう非社交的なんだよ!」