「せっかく研修を行うのであれば、学んだ内容を職場で活用してもらいたい」と考えるのは当然のことだと思います。むしろ、職場で活用されないのであれば、研修を行う意味がありません。研修担当の方から「どうすれば研修参加者が学びを実践してくれるか」というご相談を受けることも多いので、今回はその点についてまとめます。

学びの実践率を高める3つのポイント

 研修で学んだことを参加者が実践に移すために、重要なポイントは3つあると考えます。
1.学んだ内容を覚えていること
2.学んだ内容を実践したい・しようという気持ちが持続すること
3.継続的に向上させられる環境があること

 この3つのポイントを、1つずつ解説していきたいと思います。

1.学んだ内容を覚えていること

 あまりに当たり前すぎるとお感じかもしれませんが、とても大切なことです。

 人の記憶は、大きく分けて短期記憶と長期記憶があります。研修で学んだ直後には短期記憶として保持されている情報も、時間の経過とともに、忘れてしまうものと長期記憶に入るものとに振り分けられます。例えばリーダーシップやコーチングスキルを研修で学んだ人が、職場で日々チームのメンバーや部下と接する際に、研修テキストを脇に置いて、それを確認しながら部下と対話するのは現実的ではありません。つまり、実践しようと思うポイントは、記憶していなければ使いにくいのです。

 もっと時間が経過すると、残念ながら学んだという記憶すらなくなることが増えます。過去に参加した研修について、「参加したという事実」「講師の名前や顔」は思い出せても、学んだ内容は思い出せないという経験は誰しもあることかと思います。こうなってしまうと、実践につながるはずがありません。

 短期記憶から長期記憶への移行を助ける要素はいろいろありますが、ポイントの1つに、受け取った情報そのままではなく、Insight(洞察・考察)すると記憶しやすいという点があります。講師からシャワーのように情報を浴びせられても記憶に残りにくいのですが、自分の頭で整理し、自分の言葉に変換し、自分なりの解釈やアイデアと結びついたものは記憶に残りやすいのです。ですので、研修中にそのようなことを行うデザインにする必要性があります。

2.学んだ内容を実践したい・しようという気持ちが持続すること

 2つ目のポイントは、参加者の気持ちが継続するかという点です。研修中はやる気が高まっても、職場、つまり現実に戻ったらその気持ちが薄れてしまっては実践につながりません。通常、研修後の職場には講師はいませんので、励まし続けたりすることもできず、参加者の主体性にかかってくることになります。

 研修がネガティブな経験(苦痛であった、退屈であった、意義を実感できなかった、学んだ内容について苦手意識を持ったなど)で終わってしまった場合、実践しようという意識が継続することを期待できないでしょう。嫌な時間から解放され、ネガティブな感情とともに記憶から消される可能性も高まってしまいます。

 逆に、研修をポジティブな経験(学ぶことが楽しかった、理解・習得できた達成感があった、もっと学びたいと感じた、役立ちそうなので早く実践してみたい気持ちになった、など)とすることで、その感情を継続させる可能性を高めます。