例えば、今、スマートホンを使っている人は多いことと思います。あなた自身は、自分に必要なアプリを活用し、使いこなしているとしましょう。

 そこに、スマートホンに挑戦しようと思ったシニア世代の家族(例えば私の80代の母など)から、「フィーチャーホンから買い換える前に使えるかどうか確認したいから、使い方を教えてほしい」と依頼されました。さて、初めてスマホを使うお母さんに、あなたは何をどう教えますか? 自分では使えるけれども、それを初めて触る人に教えるのはとても難しいことだと感じませんか?

 それが第5段階なのです。スマホについては、私は第4段階には行けていたとしても、間違いなく第5段階には到達していません。

 また別の例を挙げてみましょう。私は昔、日本語教師をしていたことがあります。外国人に日本語を教える仕事です。日本語が母国語ですので、第4段階であることは確実なのですが、それを外国語として教えようとした時、自分が話せるのとは明らかに違うスキルを習得する必要がありました。

 「言葉の意味をどう説明するのか」「文法をどのように順序立てて学んでもらうのか」「そもそも言語を教える・学ぶとは……」などなど、日本語教師として仕事をするために、教授法を勉強し習得しなければならなかったのです。

 繰り返しますが、社内講師の方に求められているのは、第5段階のスキルで、その第5段階は「自然に」身につくものではなく、新しいスキルとして習得する必要があります。

 研修内製化、社内研修を行っている組織の方には、ぜひ社内講師の方に「教え方を学ぶ」機会を提供し、社内講師の成功をサポートしていただきたいと思います。

 社内講師に抜てきされるということは「その分野に長けている」「この人から学びたいと思われる」というとても名誉なことのはずです。しかも、講師は本業ではないのに、社内の人材育成に貢献しようという素晴らしい意志を表明してくださっている方々なのです。人事・人材開発担当者は、その貴重な人材である社内講師の皆さんに成功してもらえるようサポートする責任があるのではないでしょうか。

 講師に求められるのは、インストラクショナルデザイン、ファシリテーション、デリバリーの3つの分野における知識とスキルです。これを学び、第4段階から第5段階に進んでいただき、持っている知識や経験を共有し、社内の英知の継承、競争力強化に役立てない手はありません。

参考書籍:
講師養成講座で活躍する著者 中村 文子氏が、講師のスキルアップのためのノウハウをまとめた本
講師・インストラクターハンドブック
中村 文子、ボブ・パイク 著 / 日本能率協会マネジメントセンター

中村 文子(なかむら・あやこ) ダイナミックヒューマンキャピタル株式会社 代表取締役
中村 文子

 大阪府出身、神戸市外国語大学 外国語学部 英米学科 卒業。マイクロソフト株式会社名古屋営業所 勤務を経て、P&Gジャパン、ヒルトン東京ベイにて人材育成・組織開発に従事。2005年より現職。2006年にASTDのカンファレンスで人材育成の世界的権威、ボブ・パイク氏のセッションに初参加、大きな衝撃を受ける。トレーナー認定のプロセスを経て、2007年秋、日本人初のトレーナーとして認定される。専門分野は、トレーナー養成、ホスピタリティ、管理職研修、ビジネスコミュニケーションスキル研修など。ホテル業界、製薬会社、電機メーカーなどの業界で、活動中。早稲田大学エクステンションセンター、日経ビジネススクール、日本能率協会にて、講師実績あり。
●ダイナミックヒューマンキャピタル
http://www.d-hc.com/
https://www.facebook.com/DynamicHumanCapital/
●中村文子ブログ
http://www.d-hc.com/blog

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。