変化へのモチベーションは「変えたい」「変わりたい」という“感情”

 変革リーダーシップで知られるジョン・コッター氏の著書『The Heart of Change』(John P. Kotter, Dan S. Cohen 著 / Harvard Business School Pr)のP8~P13に、こんな対比が紹介されています。

1. See ? Feel ? Change (見て、感じて、変わる)
2. Analyze - Think ? Change (分析して、考えて、変わる)

 Change、つまり変革を起こすには、「分析して、考えて、変わる」という2番のパターンより、「見て、感じて、変わる」という1番のパターンの方が成功する率が高い、というのです。

 人は、分析データや何かの情報についての論理的な話を聞いて、新しい行動を起こそうと思うというよりは、インパクトがありビジュアルに訴えかけられる何かを通して感情を動かされ、その感情の変化が新しい行動へのモチベーションを生み、行動変容へとつながる。確かにその通りです。

 人材開発においても、研修などを通して人の行動を変えよう、行動変革を起こそうとするので、この考え方は当てはまります。求められる行動や現状の課題についての講義・解説を講師から聞いて、すぐに新しい行動を取ることを求められても、そこには「感情」が伴いません。人は理屈だけでは動かないのです。行動を変えるには、「変えたい」「変わりたい」という感情を持つことが前提となりますが、そうした感情を持ってもらうには、データを並べ立ててもあまり効果が期待できないことが多いものなのです。

 例えば、リーダーシップ研修を例にとって考えてみましょう。2番のパターンでの研修デザインは次のようなものが一般的でしょう。

■現状のリーダーシップについての課題、あるべきリーダーシップとは何か、リーダーに求められる行動や態度とはどのようなものかについての講義。

■「ぜひ実践しましょう」と講師に促される

■どういう場面で何をどう実践するかを考える

 これで「よし! 明日から自分はリーダーシップのスタイルを変えるぞ!」と思える人は果たしてどれくらいいるでしょうか。「理屈は分かるけど現実は……」と反論する人も出てくるかもしれません。研修の場では空気を乱さないよう反論まではしなくても、内心そう感じてふに落ちないまま研修を終える人もいるでしょう。分析して考えても、感情を揺り動かすものがないと、変化に至らないということなのです。

いかに「見て、感じて、変わる」を実践するか

 ではどのように1番のパターン「見て、感じて、変わる」を実践すればいいのでしょうか。

 「見る」ということがカギですので、写真や映像など視覚に訴えるもので、現状の課題を見せることはできないでしょうか。不満な顧客やハッピーではない部下、逆に目指す姿の映像や写真などです。言葉で説明するよりインパクトのあるビジュアルを活用し、「このままではいけない」「こうなりたい」などと感じてもらうのです。

 例えば、「リーダーシップスキル」の研修。「時代は変化していて、リーダーシップのスタイルも時代に合わせて変化が必要です」ということを伝えたい時、言葉でそれを解説するのではなく、「時代の変化」や「リーダーシップスタイルの変化」が見て分かるようなビジュアルを用意します。年表を用意するなどして、移り変わりを実感してもらえるような工夫も有効でしょう。さらにそれを講師が一方的に講義をするのではなく、参加者自身が考えたり話し合ったりしながら、「確かに昔と比べたら変化している」と実感することが大切です。この「実感」が行動変容へのモチベーションにつながるからです。