アンラーンとは

 何かを学ぶことが「Learn」ですが、それに「Un」が付いていますので、「学ぶ」の反対の意味になるのですが、「何かを学ばない」ということではありません。「学んだこと、身に付いていること」を「いったんリセットする」というような意味になります。

 人はいろいろな状況において、すでに持っている知識や過去の経験から判断し、自分の行動を決めます。その脳の反応は、無意識に行うことと意識的に行うことの両方あります。そうした自分の「いつものパターン」をいったんリセットするのがアンラーンです。

 人材開発において、研修などで新しい知識や行動、スキルを習得してもらう際、目的としては、「知識やスキルを職場で活用する」「これまでとは違った行動を取ってもらう」というのが一般的です。アンラーンは、これまでの知識や行動パターンに、新しく得たことをそのまま上書きしようとするのではなく、いったん消去・リセットしてから新しいものを学び直す方が効果的である、という考えです。

アンラーンの難しさ

 体に染みついているものであればあるほど、また、無意識に行っているものであればなおさら、このアンラーンは難しくなります。

 例えば下のだまし絵をご覧ください。少女にも老婆にも見えるという、よく見かける絵ですね。

若い女性と老婆

 この絵を初めて見た時に、少女にしか見えなかった人が、説明を聞いて老婆にも見えるようになったとしましょう。両方が見えるようになった後で、もう一度、「老婆は見えずに少女だけが見える見方をしてください」と言われても、一度見えるようになってしまったものを見えなくするのは非常に困難です。その「見えたものを見えなくする」のがアンラーンです。

 これが人材開発や研修において何を意味するでしょうか?

アンラーンしないままの研修

 例えば、コーチングスキルや部下育成スキル研修で、部下との関わり方を学ぶ場面を想像してみましょう。

 部下にすべて指示を出すのではなく、問いかけをし、部下に考えさせ、部下の主体性や自主性を引き出すコーチングスキルを学びます。参加者である上司の皆さんは、これまでも日々部下と接してきています。部下との対話には、それぞれ自分のやり方があるでしょう。

 例えば、部下から何かの報告を受けた際に、「この点については、どうしたらよいと思われますか?」というような質問を受けたとしたら、「あぁ、それは◯◯するのがいいんじゃないかな?」とアドバイスしていた上司の場合はどうでしょうか。すぐにアドバイスするのではなく、部下に問いかけて、部下の考えを引き出すというコミュニケーション方法に変えましょう、と研修で学ぶわけです。