視点③:事業ビジョンとの関係を明確にする

 組織における価値観の見直しは、マネジメントスタイルやワークスタイルの大きな変革をもたらします。そのため、その取り組みは経営トップレベルの変革プログラムとして位置づけられなければ、けっして実現することはありません。

 より具体的に言えば、ダイバーシティ&インクルージョンと、将来の事業ビジョンや今後の事業戦略との関係が明確に示されることが必要です。会社全体の事業経営にとって重要だからこそ、大きな変革が求められるという関連性の整理が求められます。

 実際に企業のワークショップで、事業ビジョンと女性活躍の関係について尋ねると、たくさんの意見が挙げられます。

「新規事業を推進していくためには、新しい視点が必要だ」
「優秀な人材を採用し、組織が成長していくためには、女性が活躍する会社にならなければならない」
「グローバル化を進めるには、多様な人材を活かすマネジメントができる必要がある」

 このような議論を社内で積極的に行うことによって、1人ひとりの社員が考えると同時に、多くの声を集めることが重要です。

 課題分析と聞くと、「何が問題か」というWhatにばかり目が行きがちですが、「なぜ問題か」というWhyが同じくらいか、それ以上に重要になります。なぜ、変わることが必要なのかという「変革の必要性」が共有されないまま問題点ばかりが指摘されても、納得感が乏しいため、行動計画の実効性は薄れてしまいます。

 会社全体の大きな方向性との関連が明確にされることによって、女性活躍を阻害する個々の問題点を解決することの必要性が、経営層だけではなく現場の人々にとっても、より理解されやすいものとなるのです。

松丘 啓司(まつおか・けいじ) エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。主な著書として、『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。