リアルタイムの対話が効果的に機能するかどうかは、上司のピープルマネジメント力にかかっています。したがって、これらの企業における取り組みは、ピープルマネジメントを職場の日常の中に定着させることを目指すものであると捉えることができます。

 このようなグローバル企業の動きは、早晩、日本企業にも訪れるでしょう。もちろん、年次評価がそう簡単に廃止されるとは思えませんが、評価制度が変わらなくともピープルマネジメントが重要であることに違いはありません。そこで以下では、ピープルマネジメントを行ううえで、上司が注意すべきポイントを3つ挙げたいと思います。

①評価尺度を脇に置く

 上司が部下のことを見る際、通常、何らかの評価尺度を用いています。人事制度で定義されている人材要件に従って客観的に評価することもありますが、自分がこだわりを持っている何かの基準と比べたり、管理職層が共有しているあるべき像に照らし合わせて「できる」「できない」と判定したりもしています。客観的であれ主観的であれ、部下からすると評価尺度はすべて外的基準です。

 もちろん外的基準が良くないというわけではありません。外的基準があるからこそ課題が明確になることもあります。基準が示されることによって、それに向けて切磋琢磨しようという意欲がわくという面もあるでしょう。しかし、外的基準はかならずしも本人ならではの強みを映し出す尺度にはなりません。

 上司が自分の評価尺度にばかり縛られていると、部下の強みが見えなくなる恐れがあります。ピープルマネジメントにおいて重要なことは、部下の強みを最大限に引き出すことによって、より大きな成果を実現することにあるため、上司は自分の評価尺度を意識的に脇に置いて部下の強みを注視することが必要です。

 成長するのも、より大きな貢献をするのも本人であるため、本人がそうしたいと強く思えることが何より重要であり、上司はそれを支援する役割を担うという認識を持つ必要があります。

②議論ではなく対話する

 「議論を戦わせる」とか「議論に勝つ」とかいうように、議論には勝ち負けの概念がもともと含まれています。議論に勝つというのは、相手がどう思っているかにかかわらず、自分の主張を相手に納得させることです。つまり、出発的はあくまでも自分にあります。

 他方で「対話」の出発点は相手側にあります。相手の考えや気持ちを理解することが最初にあり、それを踏まえて自分の考えを伝えるという順番になります。特にピープルマネジメントにおいては、前回のコラムで述べたように部下の価値観を理解することが重要です。部下がなぜそうしたいのか、どのようになりたいのかを上司が理解して、承認していなければ、部下の自主性や主体性は閉ざされてしまいます。

 多くの管理職は議論することに慣れています。論理的に説明して相手を説得できなければ管理職としては心もとないので、議論のスキルは管理職にとって大事です。けれども、ピープルマネジメントの場面では自分の主張を押し通す議論ではなく、相手の理解に基づく対話を用いることが必要です。