部下の価値観を上司が理解することが出発点

 では、ピープルマネジメントを行うために上司は何をすべきでしょうか。今回はもっとも基本となる価値観の理解について述べたいと思います。

 部下の強みを活かすためには、当然のことながら、本人の強みが何であるかを上司と部下の双方が理解していることが必要です。しかし、「○○さんは□□が得意だね」と観察される強みだけを理解するのでは不十分です。それと同時に、その強みがどのような時にもっとも発揮されるかという前提条件を理解することが必要です。その前提条件とは本人の価値観を指しています。

 価値観とは、その人が何を大切に感じるかの基準です。たとえば、他者とのつながりが何よりも大切だと感じる人もいれば、本質を追究することがもっとも大事だと感じる人もいます。価値観に優劣はなく、人による違いがあるだけです。

 価値観と強みは連動しています。自分の価値観に合った行動は自然と現れるため、出現頻度が高くなるからです。たとえば、他者とのつながりを大切にする価値観を持った人は、無意識のうちに「周囲への配慮」ができるというのが一例です。

 しかし逆に、自分の価値観が満たされない状況に置かれると、本来の強みが十分に発揮できなくなってしまいます。たとえば、他人のことなど構わずに個人プレーを行うことが重視される組織風土の下では、周囲に配慮しても評価されることはありません。そのような環境では、強みが抑圧されてしまいます。強みを発揮する意欲が湧かないからです。つまり、価値観は意欲とも連動しているのです。

 部下が意欲を高め、強みの発揮を促すためには、部下の価値観を理解することが必要ですが、部下の価値観の理解は短期的な能力発揮だけではなく、中長期的なキャリア開発にも大きく関わってきます。何を大切にしているかという価値観は、「将来、どうなりたいか」「どのように活躍したいか」というキャリアビジョンの決定要因になるからです。

 ピープルマネジメントは部下の短期的な能力発揮だけではなく、中長期的な成長をも促進するものです。そのため上司には、部下がキャリアビジョンを描き、そこに向けて成長していくことを支援する役割を担うことが求められています。部下のキャリア開発支援は、部下の価値観を理解することから始まるのです。

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松丘 啓司(まつおか・けいじ) エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。主な著書として、『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。