女性社員のキャリア意識を高めようとしても、社内にロールモデルがいないので難しいという声をしばしば耳にします。確かに様々なロールモデルがいる環境ならば、自然とキャリア意識が高まるかもしれませんが、最初に管理職を作らなければロールモデルも増えないので、ロールモデルを作るというのは施策にはなりません。まずは本人の意識変革に直接的に訴えかける施策が必要です。

 また、女性管理職候補者の能力開発や実績作りにもっとも影響を及ぼすのは直属の上司です。直属の上司が本人に対して、チャレンジできる仕事を任せ、実績作りを支援しない限り、キャリア形成はできません。管理職全体のマネジメントスタイルを変えていく施策は、中長期的な効果をねらううえで重要ですが、短期的にはまず直属の上司に働きかける施策が効果的です。

ポイント②:プロジェクト志向で考える

 私の知る限り企業のダイバーシティ推進担当には、まじめで責任感の強い方々が多いようです。そのせいか、行動計画を策定する際に施策を厳密に定義しようとしたり、立案した施策をすべて自分たちで推進しなければならないと考えたりする傾向も見受けられます。もともと、短期間で細部までの検討は困難であるうえに、施策の中にはダイバーシティ推進や人事の範疇を超えるものも含まれるため、行動計画の策定は来年度以降のプロジェクトを定義するという発想で行うことが重要です。

 今回の女性活躍推進法のように、政府が企業内部の問題にまで「外圧」をかけてくる機会は滅多にありません。この外圧を有効活用し、これまで問題として認識されていながらも、なかなか解決されてこなかった諸課題を経営議論の俎上に載せ、検討を前進させる好機と位置付けることが得策です。

 ほとんどの企業においては、女性活躍推進法の目標値を届け出る前に経営承認を得るプロセスが取られることでしょう。経営メンバーが目標値を承認するためには、目標値だけではなく、どのような施策によってそれを達成するのかというアプローチも同時に求められます。そのアプローチには、何を行うかという取り組み施策だけではなく、誰が行うかという推進体制も含めることが重要です。それによって、来年度以降の推進責任が明確になります。

 もちろん、実行段階ではダイバーシティ推進担当が実際に手を動かして実施する施策も多くを占めると思われますが、行動計画を策定する段階では、起案者としての立場で会社にとって重要なプロジェクトを提案するという姿勢で臨むことが重要です。

松丘 啓司(まつおか・けいじ) エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。主な著書として、『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。