座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」
座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」
出口 治明 著 / KADOKAWA / 1,620円(税込) / 272ページ

 今年初めに著者の出口氏に会う機会があった。これまでのご自身の経験からリーダーシップ論を語られ、「おススメの本があればお願いします」という最後の質問に紹介していただいのが発売前のこの本だった。

 この書籍自体は、徳川家康や明治天皇も愛読した帝王学の書籍として以前に上司に紹介されたことがある。確か、その上司も出口氏と同様に歴史を自身のマネジメント指針に取り入れていた。一度は手に取ってみたものの、あまりの難解さに一瞬であきらめてしまったのが10年以上前の話である。

 あの難解だった書が、丁寧に分かりやすく、出口氏の経験を取り入れながら解説されている。本物の古典を読んでもいないのに、読んだ気になれるくらいである。

 年初にお会いした時に出口氏が紹介したエピソードの一つが「リーダーは不機嫌な表情を見せてはいけない」である。

 上司が思うより、部下は上司の表情をよく観察している。上司の不機嫌さがどれだけ組織の中での情報を止めてしまっているか、共有すべきことを阻止してしまっているか、部下の提案を拒んでいるかを認識すべきだという。いくら体調が悪くても、リーダーとしてニコニコしていることが必要であり、リーダーの存在そのものがメンバーにとっての労働条件になっていることを忘れてはいけない。

 ここ最近よく聞かれる組織活性やチームビルディングのための“リーダーのポジティブな表情・表現”の必要性は、Google社などが実証実験の結果を発表する随分と前、唐の時代から言われていたということに驚きと感銘、そして興味を覚えた。

 中国、唐の時代の太宗・李世民の言行録といわれるこの書は、このようなエピソードだけでなく、組織リーダーのための示唆と行動指針が多く、分かりやすく記されている。リーダーとしての心構え、感情の表し方、思考の在り方、言葉の選び方、施策の打ち方、そして実際の行動について部下からの進言、アドバイザーやメンターといった立場からのアドバイスも含めてつづられている。

 私のように、原書を手に取ってもなかなかページが進まなかったという方には、人事・人材育成担当者に限らず全てのリーダーに一読を勧めるものである。リーダーのあるべき姿と行動、振り返るべきポイントまで本当に全方位で読み取ることができる。そしてあらためて古典に向かうきっかけにもなりえる書籍である。

参考書籍

帝王学―「貞観政要」の読み方 (日経ビジネス人文庫)
山本 七平 著 / 日本経済新聞社 / 545円(税込) / 225ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 有限会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、他にて一貫して人事を担当のちアイズプラスを設立。人材・組織開発コンサルタントとして、主に企業向けに採用から教育、評価などの人事制度設計支援・コンサルティング、タレントマネジメントやダイバーシティ、女性活躍推進施策の企画・提供、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。このほか、NPO法人キーパーソン21の理事を務め、全国の学校現場に児童、社会人(企業)、学校、地域の協働プロジェクトとしてキャリア教育プログラム提供の支援を行うなど、社会貢献活動を続ける。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー/プロファイラー。
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