池照 佳代
アイズプラス 代表取締役

事業を創る人事 グローバル先進企業になるための人づくり
事業を創る人事 グローバル先進企業になるための人づくり
綱島 邦夫 著 / 日本経済新聞出版社 / 2,160円(税込) / 312ページ

 私は現在、人事制度をほぼゼロから構築するプロジェクトに参加している。先週、このプロジェクトミーティングでの話題は、「社員があまり考えなくても成果が出るような徹底した“仕組みづくり”」か「個々人が考えて動くことを促す“成長支援づくり”」のどちらを人事制度改革の軸としていくかだった。もともと“人事部の在り方をゼロベースで考える”のがこのプロジェクトのテーマであり、本書は私自身も含むプロジェクトメンバーにとって大変参考となる一冊となった。思えばこの分野に身を置いて数十年たつが、どの企業でも「ヒト」を語る際に必ず出てくる視点の1つは「人事の役割」である。

 “人事の根源的な目的は、会社の使命・ビジョン・価値観と戦略を支え、新しい技術や市場の開拓、新しい事業モデルや業務プロセスを実現する人材力や組織能力を開発すること”とは前書きにある著者の見解である。

 本書は世界の一流企業がいかに人材と組織の力を高めることに戦略構築し育んできたかを、豊富な事例をベースに紹介している。紹介には一部、トヨタやパナソニックなどの日系の大手企業も含まれており、欧米企業と日系企業の施策への視点や導入プロセスの違いが比較できることも興味深い。

 読み進めながら、時に危機感を感じることがあった。各企業で活用されているデータ、世界各国各企業の未来に向けた戦略、そして著者自身が現場で見聞きしている世界と日本との様々な違いなど、著者の考察には厳しい指摘も多いからだ。

 だが、この危機感に対する対応にも、上記の“人事の根源的な目的”を目指した様々な視点や施策として打ち手があることが読み取れる。何しろ、かなりの数の事例と幅広い考察が示されているのである。経営の多くの課題は「ヒト」の課題であり、この課題解決には「ヒト」に関わる我々が主体的に関わり、「ヒト」を中心に置く戦略をとることで立ち向かっていけることを理解できる。私たちが周囲を巻き込んで動きだすことが、真の意味で各社の「人づくり」につながると理解できるからである。

 冒頭で紹介した企業では、あらためて「人事部の役割は何か」を議論することになっている。この書籍を手元に置いて様々な企業事例を参考にしながら、プロジェクトを進めていく予定である。

 「トップからの期待がはっきりしないから」「人事はあまり期待されていないから」「お金を生み出す部署じゃないから」などとモヤモヤした気持ちでいるよりも、この書籍を参考に「私たちはこんなふうに経営に関わる」と明言し、世界中で活動する我々の仲間の事例に背中を押されながら、一つひとつトライ&エラーで進めてみてはどうだろうか。

参考書籍

役員になる課長の仕事力
綱島 邦夫 著 / 日本能率協会マネジメントセンター / 1,728円(税込) / 216ページ

池照佳代氏の講演
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8/2東京 「働き方改革」リーダー養成講座

池照 佳代(いけてる・かよ) 有限会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、他にて一貫して人事を担当のちアイズプラスを設立。人材・組織開発コンサルタントとして、主に企業向けに採用から教育、評価などの人事制度設計支援・コンサルティング、タレントマネジメントやダイバーシティ、女性活躍推進施策の企画・提供、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。このほか、NPO法人キーパーソン21の理事を務め、全国の学校現場に児童、社会人(企業)、学校、地域の協働プロジェクトとしてキャリア教育プログラム提供の支援を行うなど、社会貢献活動を続ける。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー/プロファイラー。
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