池照 佳代
アイズプラス 代表取締役

講師・インストラクターハンドブック
講師・インストラクターハンドブック
中村 文子、ボブ・パイク 著 / 日本能率協会マネジメントセンター / 3,024円(税込) / 336ページ

 人事や人材育成担当者の代表的な仕事のひとつが、社内講師業である。だが、私もかつてそうだったが、ほとんどの担当者は講師やインストラクターの経験がなく、いきなり講師になることになって途方に暮れる。少なくとも私はそうだった。そんな、わらにもすがるような思いで見つけたのがボブ・パイク氏の講師向けプログラムであった。早速このプログラムの門をたたいた私の目的は当初、講師・インストラクターとして「失敗しないように」であった。

 「研修」という名のつくものが苦手という人は多い。自分自身が人事部に所属しながら、私も「研修」と名のつくものは受けるのも登壇するのも苦手だった。特に、登壇の機会が増えてからは、参加者だった頃には見えなかった様々なポイントが気になってくる。目的に沿っているのか、どう内容を整理すればいいのか、どう話せばいいのか、そしてずっと話しをしていていいのか? など。講師という役割にこれほどの悩みがあるとは思わなかったが、世の中には意外にも「大人向け受講者のための講師ハンドブック」やプログラムは少なかった。

 この書籍は、私自身が受講したこのプログラムの内容を中心に、「参加者主体の研修デザイン」が順を追って丁寧に解説されている。それは、「研修」をその1回のイベントとしてではなく、成果に向けた学びを得ることを目的としている。研修前後を含めたプロセスデザイン、時間のデザイン、資料やスライドの効果的な使い方、ファシリテーションのスキル、そして講師としてのマインドセットまで「大人の学び」に焦点を合わせたスキルやテクニック、そして事例までもが多く紹介されている。

 私自身がこのプログラムで学んだ目からうろこのポイントがいくつかある。対象者が大人だと思って、資料の文章量を増やしたり講義部分を多くしたりしていたが、実は「学習者は大きな身体をした赤ちゃんである」こと。もうひとつは、大人だと思って黙って講義を聴いてもらう方がよいと思いこんでいたが、実は「大人が記憶を保持しながら話を聴くことができるのは20分」であった、などである。これらは、後に講師という仕事もすることになった私自身が研修プログラムに取り入れ、「参加者主体の研修デザイン」に生かしているものである。「失敗しないように」と願いプログラムに参加した私の目的は、このプログラムを経て試行錯誤した現在では「大人の参加者がより主体的に学べるように」というポジティブな目的に変化している。

 社内の情報を伝える、専門的な知識を習得・体得してもらう、現場でそれらを生かして成果につなげるなど、人事・人材育成担当者が行う仕事は多岐にわたる。そのどれをとっても、受け手が主体となって知り、学び、活用することを目指すなら、ぜひ、手元に置いて文字通りハンドブックとして役立てていただきたい一冊である。

ダイナミックヒューマンキャピタル社 トレーナー養成プログラム
http://www.d-hc.com/service/trainer_boot_camp

参考書籍

『DVD付 講師を頼まれたら読む「台本づくり」の本』
大谷由里子 著 /中経出版 / 1,728円(税込) / 224ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 有限会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、他にて一貫して人事を担当のちアイズプラスを設立。人材・組織開発コンサルタントとして、主に企業向けに採用から教育、評価などの人事制度設計支援・コンサルティング、タレントマネジメントやダイバーシティ、女性活躍推進施策の企画・提供、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。このほか、NPO法人キーパーソン21の理事を務め、全国の学校現場に児童、社会人(企業)、学校、地域の協働プロジェクトとしてキャリア教育プログラム提供の支援を行うなど、社会貢献活動を続ける。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー/プロファイラー。
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