池照 佳代
アイズプラス 代表取締役

社長が“将来”役員にしたい人
社長が“将来”役員にしたい人
秋山 進 著 / 日本能率協会マネジメントセンター / 1,620円(税込) / 216ページ

 ある企業の経営幹部と幹部候補生向けの選抜プログラムを実施していた時、社長から依頼のあった“欲しい役員人材”は「昔は暴走族だったけど、今はまじめに働くことが楽しいっていう人」だった。やけに具体的なキャリアを示した社長だったが、そのような人材がこの会社にほぼいない人だということを互いに目で確認して互いに苦笑いしてしまったことを覚えている。この話、実話である。

 今回、本書の“はじめに”の部分に著者が経験した同じような話が載っていた。前出の社長のような具体的なキャリアパスも含め、多くの社長が描く次世代候補者としての役員候補者の選抜と育成については、多くの会社にとって課題となっている。

 5章25項目からなる“役員”にしたい人のプロフィールは、そのほとんどが「自分」が基軸になっており、自分の視点、思考、姿勢、感情のコントロール、そして部下や上司といった近しい人間関係への振る舞いや行動を変えることで自分のものにできる、または具体的な行動指針として「役員への道」を示す構成になっている。

 私自身が特に共感を覚えたのは、「意思決定における周囲の感情への配慮」と、「部下への強い関心」の部分である。まさに、周囲の感情に配慮し過ぎて目的達成に至らない某社の部長代理や、部下の強みや弱みへの関心を示せずに部下との信頼関係が作れなかった某組織の課長の事例が目に浮かんだからである。

 各章の最後に記されている「できる人と残念な人」の内容には、少しドキッとしながら我が身を振り返ることができる。同じく章の最後にある「カギになる習慣」は、様々な企業の経営幹部育成や選抜に携わり、多くの経営者とともに時間を過ごした著者だからこその明日からでも取り組める具体的な開発アドバイスが記されている。

 本書の随所に紹介されている様々な企業経営者の「経営陣として活躍になる前」のエピソードは興味深い。現在は手の届かない存在のような経営者たちも、課長や部長時代にはつまずいたり苦悩があり、それぞれが試行錯誤やキーとなるメンター的な人物からのアドバイスを経て、最終的には主体的に物事に臨み、真剣に取り組んだバカまじめな姿が紹介されているからだ。

 組織人として自身の視点や行動を振り返ることに役立つだけでなく、人事担当者として役員候補の選抜基準やプロセス、そして育成方法の見直しや導入の際に、手元に置いて基準を整理する一助となるお薦めの一冊である。

参考書籍

『マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力』
テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー 著 / 中竹竜二 監修 / 樋口武志 訳 /英治出版 / 2,052円(税込) / 388ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 有限会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、他にて一貫して人事を担当のちアイズプラスを設立。人材・組織開発コンサルタントとして、主に企業向けに採用から教育、評価などの人事制度設計支援・コンサルティング、タレントマネジメントやダイバーシティ、女性活躍推進施策の企画・提供、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。このほか、NPO法人キーパーソン21の理事を務め、全国の学校現場に児童、社会人(企業)、学校、地域の協働プロジェクトとしてキャリア教育プログラム提供の支援を行うなど、社会貢献活動を続ける。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー/プロファイラー。
●アイズプラス http://www.isplus.co.jp/
●ブログ http://isplus1.hatenablog.com/
●Twitter https://twitter.com/

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。