池照 佳代
アイズプラス 代表取締役

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの
生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの
伊賀 泰代 著 / ダイヤモンド社 / 1,728円(税込) / 248ページ

 「生産性」という言葉を人事・人材育成担当者が本格的に意識しはじめたのは、「働き方改革」という言葉がメディアで踊るようになった比較的最近ではないだろうか。「生産性」といえば、ひと昔前のMBAの教科書では工場や生産現場での事象と結びつくことが多かったからである。本書の副題にある“マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの”という部分に興味を持ち、思わず書店の平台から手に取った。

 著者は、米国系コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーにコンサルタント、その後に人事として同社に携わり、国内・海外コンサルタントの「ヒト資源」としての見識を深めている。日本と欧米のこの資源の違いは主に2つあり、1つが彼女が前著で書かれたリーダーシップについての意識の差、そしてもう1つが「生産性」ということである。

 労働時間の長さ、組織の滞留年数の長さ、会議時間の長さ、資料の多さ、有給休暇取得率の低さなど、これまではどれもが「日本的な働き方」を示す特徴となっていたものである。人口が増え続け、それに伴う経済成長率も確保できたこれまでの前提ならば、これらの特徴も成果に結びついたように見え、感じられた。

 では、現在はどうなったか? 人口減少や価値観の多様化を迎えた今、同じままでよいのか? これが私たちに突きつけられた課題であり、工場という生産現場以外の場所でも「生産性」を見直す好機だと著者は述べている。

 この生産性の見直しをより具体的にできるよう、本書ではマッキンゼーで実施されてきた方法を中心に非常に詳細な生産性向上の視点と示唆が紹介されている。採用、会議、研修、資料、データの取り方、そして管理部門の仕事、我々が日々実践していることのほぼすべてが「生産性」の対象になるのである。

 本書を手に取り、このうちの1つでも参考にしながら取り入れていくことで、同じ仕事でもその仕事への向かい方とアウトプットは確実に違いが出る。資料を最終的なアウトプットイメージから作成していく“ブランク資料”は、私自身も若かりし頃にイギリス人の上司から教わった方法である。これを知る前と後では、かける時間や労力、資料の質は劇的に違いがあることを私自身が体感している。

 人事・人材育成担当者としては、メディアで踊る「生産性」を、まずは自らの仕事や働き方、そして自らの組織に当てはめてみることから始めてみることをお薦めする。我々の「生産性改革」や「働き方改革」こそが、全社・組織全体の生産性向上の本質議論にもつながるものになると確信する。

参考書籍

『採用基準』
伊賀 泰代 著 / ダイヤモンド社 / 1,620円(税込) / 248ページ

池照 佳代(いけてる・かよ) 有限会社アイズプラス 代表取締役
池照 佳代

 約14年間、マスターフーズリミテッド、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、他にて一貫して人事を担当のちアイズプラスを設立。人材・組織開発コンサルタントとして、主に企業向けに採用から教育、評価などの人事制度設計支援・コンサルティング、タレントマネジメントやダイバーシティ、女性活躍推進施策の企画・提供、エグゼクティブコーチング、EQ(感情知性)開発支援を提供している。このほか、NPO法人キーパーソン21の理事を務め、全国の学校現場に児童、社会人(企業)、学校、地域の協働プロジェクトとしてキャリア教育プログラム提供の支援を行うなど、社会貢献活動を続ける。CDA(キャリアデベロプメントアドバイザー)、EQGA公認トレーナー/プロファイラー。
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