また、集団分析を実施したのは78.3%という結果でした。この部分についても努力義務といわれていますが、会社としてはこの結果を踏まえた、その後の改善アクションこそ本当に大切なことです。

 無駄なストレスの低減は生産性アップにつながる可能性や、ラインケアの向上により、メンタル不調に起因した離職・休職を減らすことができる可能性もあります。当事務所でも集団分析を実施しましたが、限られた予算の問題もあり、事後のアクションに至ることのできた会社はわずかでした。

 特に、中小企業のように一つの部署の人数が少ない場合、10人未満の部分集団分析結果を事業者に提供することは、個人特定につながる恐れがあることから、厚労省により例外を除いて原則禁止されていました。実際に、サンプル数が少ないためバイアスが大きい可能性もあります。

 従って、こうした組織の切り取り方自体にも工夫が求められる場合が多くありました。特に実施前からかなり戦略的に事後のアクションを見据えて「組織をどうやって区切ってゆくのか」を考えていく必要性を感じました。2年目、3年目以降の課題として、いかに事後のアクションをとり、ストレスチェックをコストではなく成果として、企業を改善するための道具としていけるかが挙げられると考えます。

 「義務ではなく、メンタルトラブルを未然に予防し、積極的に組織改善に役立てるヒントとなるようなストレスチェックを実施していきたい」。そう、あらためて思っています。

著者:石井 聡
フェミナス産業医・労働衛生コンサルタント事務所
九段下駅前ココクリニック 院長
監修:石井 りな
フェミナス産業医・労働衛生コンサルタント事務所、(株)プロヘルス代表
石井 りな(いしい・りな) 精神科専門医、産業医 / フェミナス産業医事務所、(株)プロヘルス代表
石井 りな

 千葉大学医学部卒。総合病院にて研修後、精神科病院や精神科クリニックに勤務。並行してうつ病リワーク施設や企業向けメンタルヘルス支援機関を経験。精神分析・力動的精神療法、認知行動療法などの精神療法も学ぶ。診療や企業での経験を通じて、従業員の健康対策は企業の生産性を高めるうえで必要不可欠だと確信。「健やかに活き活きと仕事に挑戦し続けられる社会」を目指し、精神科産業医の立場から企業を支援したいと思い、女性医師を中心にフェミナス産業医事務所を設立。現在、多くの企業で産業医として活動する傍ら、大学で費用対効果の高いメンタルヘルス対策についての研究も行っている。
九段下駅前ココクリニック ブログ ツイッター
フェミナス産業医事務所

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。