多様な働き方

 フレックスタイム制の見直しとして、フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1カ月から3カ月に延長することが盛り込まれています。より長期間で労働時間の合計を合わせればよくなるため、柔軟な労働時間の運用が期待されています。また、企画業務型裁量労働制の対象業務が拡大されます。特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設も盛り込まれており、裁量労働制が拡大・加速していく様子です。

 一方で、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大、および、高度プロフェッショナル制度の創設について、対象業務の範囲の明確化、健康確保措置の強化といった修正を考慮しても、「長時間労働を助長する恐れがなお払拭されておらず、実施すべきではない」との反対意見が見られました。

 いずれにせよ、固定労働時間の枠組みが段々と崩されていきますが、同時に労働と健康管理を含めた個々の自己管理が強く求められます。いくら裁量が認められるとはいえ、ある程度の規則正しい生活を保持していかないと、不眠やうつなどで体調を崩しやすくなるため注意が必要です。

 個人的に最も注目しているのは産業医・産業保健機能の強化が明示されたことです。

 産業医側は関心が高いものの、経営者や人事側は「働き方改革」と「産業医」がそれほど強く結びついていない印象がありました。しかし、今回の法律案要綱では労働安全衛生法の改正として、「事業者から、産業医に対しその業務を適切に行うために必要な情報を提供すること」や各場面に医師の面接指導や健康確保措置の強化などが盛り込まれており、産業医・産業保健機能の強化が明示されたことは意義が大きいと感じています。

 働き方改革が、絵に描いた餅ではなく、実現可能でかつ生産性向上につながるよう、産業医も当事者意識をもって取り組んでいきたいと考えています。

石井 りな(いしい・りな) 精神科専門医、産業医 / フェミナス産業医事務所、(株)プロヘルス代表
石井 りな

 千葉大学医学部卒。総合病院にて研修後、精神科病院や精神科クリニックに勤務。並行してうつ病リワーク施設や企業向けメンタルヘルス支援機関を経験。精神分析・力動的精神療法、認知行動療法などの精神療法も学ぶ。診療や企業での経験を通じて、従業員の健康対策は企業の生産性を高めるうえで必要不可欠だと確信。「健やかに活き活きと仕事に挑戦し続けられる社会」を目指し、精神科産業医の立場から企業を支援したいと思い、女性医師を中心にフェミナス産業医事務所を設立。現在、多くの企業で産業医として活動する傍ら、大学で費用対効果の高いメンタルヘルス対策についての研究も行っている。
九段下駅前ココクリニック ブログ ツイッター
フェミナス産業医事務所

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。