しかし、職場へ相談したところ「できるだけ仕事を続けられる形で、かつ周囲への影響も極力抑えながら……」と、可能な対応を一緒に検討してくださいました。外来診療のない病棟業務の日は10時出勤の時差通勤、昼休みには当直室で横になることも認めていただき、悪阻の時期をなんとかやり過ごすことができました。毎日でなくとも、週に数日、ラッシュを避けて遅く自宅を出られるだけで随分と楽になりました。仕事中に横になるスペースを利用できたこともだいぶ助かり、午後の仕事がはかどりました。

 職場のちょっとした配慮やケアで、悪阻を和らげ、気持ちよく仕事を続けることが可能です。

 また、ここでポイントなのは、妊娠には定まった期間があり必ず終わりがあるということ。悪阻にも終わりがあります。メンタル不調の場合は改善までの期間が千差万別で、良かれと思って無計画に軽減措置を始めてしまうと、漫然と年単位で措置が続いてしまうこともあります。しかし、妊娠や悪阻については必ず期間が限定されているのです。期間を予測できるからこそ、限定的な配慮を比較的行いやすいと考えられます。

 相談された場合に配慮を行うことも大切ですが、妊娠中の不調はなかなか言い出しにくいことも多いので、人事から声をかけて情報提供していくことも大切です。妊娠の報告を受けたら、社会的な手続きのほかに、相談窓口や休養室の利用、可能な配慮があることなどを早めに伝えられると、妊娠した社員さんも安心して仕事を続けられることと思います。

<社員から妊娠の報告を受けたら、まず伝えること>

①健康面の相談窓口を利用できること
 社内の産業医・保健師・カウンセラー、あるいは外部相談窓口など

②休養室が利用できること
 労働安全衛生規則および事務所衛生規則において、「事業者は、常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者が臥床(がしょう)することのできる休養室または休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない」と規定されています。ないところは、早急に休養スペースを用意しておきましょう。

③状況によって、できる配慮があること
 時差通勤、時短勤務、業務内容の変更、配置転換など

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石井 りな(いしい・りな) 精神科専門医、産業医 / フェミナス産業医事務所、(株)プロヘルス代表
石井 りな

 千葉大学医学部卒。総合病院にて研修後、精神科病院や精神科クリニックに勤務。並行してうつ病リワーク施設や企業向けメンタルヘルス支援機関を経験。精神分析・力動的精神療法、認知行動療法などの精神療法も学ぶ。診療や企業での経験を通じて、従業員の健康対策は企業の生産性を高めるうえで必要不可欠だと確信。「健やかに活き活きと仕事に挑戦し続けられる社会」を目指し、精神科産業医の立場から企業を支援したいと思い、女性医師を中心にフェミナス産業医事務所を設立。現在、多くの企業で産業医として活動する傍ら、大学で費用対効果の高いメンタルヘルス対策についての研究も行っている。
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フェミナス産業医事務所

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。