一言でいえば、同じ状況と事実を、自分としてどのように捉えたかということです。Bさんの捉え方は適応的認知(視野を広げたバランスの良い考え方をし、自分を追い込まずに適切な行動に結びつける捉え方)といえます。一方のAさんの捉え方は、非適応的認知(往々にして感情に支配され、自分をさらに追い込んでしまうような、事実に対するゆがんだ捉え方)の傾向があります。

 建設的に適応的認知を行ったBさんの翌日からの行動と、非適応的認知に支配されてしまったAさんの翌日からの行動に差が出たのは上の例からも明らかです。このように非適応的認知は、本来ならば避けたいはずの結果を、自分の悲観的な認知が呼び寄せてしまったことにお気づきになりましたか? 自分のその後の未来を、自らが予想した悲観的な結末へとつなげてしまっているのです。

 もう一度Aさんの捉え方を整理してみましょう。

 「自分に能力がないのではないか」という自責的で悲観的な認知にとらわれてしまい、上司の言葉をゆがんだ捉え方で解釈してしまいます。結果的に仕事の態度が悪い方に変化し、上司との関係を悪化させてしまいました。「なんの仕事をするか?」以上に、「誰と仕事をするのか?」は、充実感を左右する大切なポイントです。嫌悪感のある上司に対して良い仕事なんてできませんね。結果として仕事がうまくいかず、評価もされなくなり、より上司との距離が開いてしまい、さらに苦手意識が大きくなっていくという負の連鎖を生み出してしまいました。

 この事例比較に現れているように、望む良い結果を導き出すために、事実をどう捉えて行動するべきなのか、広い視野とバランス感覚を持って逆算していく力は、想像以上に私たちの感じるストレスを軽減し、未来を左右する大切な力なのです。

著者:石井 聡=フェミナス産業医・労働衛生コンサルタント事務所 九段下駅前ココクリニック 院長

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石井 りな(いしい・りな) 精神科専門医、産業医 / フェミナス産業医事務所、(株)プロヘルス代表
石井 りな

 千葉大学医学部卒。総合病院にて研修後、精神科病院や精神科クリニックに勤務。並行してうつ病リワーク施設や企業向けメンタルヘルス支援機関を経験。精神分析・力動的精神療法、認知行動療法などの精神療法も学ぶ。診療や企業での経験を通じて、従業員の健康対策は企業の生産性を高めるうえで必要不可欠だと確信。「健やかに活き活きと仕事に挑戦し続けられる社会」を目指し、精神科産業医の立場から企業を支援したいと思い、女性医師を中心にフェミナス産業医事務所を設立。現在、多くの企業で産業医として活動する傍ら、大学で費用対効果の高いメンタルヘルス対策についての研究も行っている。
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※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。