働く人たちは様々なストレスにさらされています。仕事をしながら心身をよい状態に維持していくためには、どんなことに気をつけたらよいでしょう。今回は最近注目されている心理学、ポジティブサイコロジーについて簡単にご紹介したいと思います。

心の中のプラス部分に目を向けることを研究する

 ポジティブサイコロジーとは、“ポジティブ(明るく前向きに捉えること)” と “サイコロジー(心理学)” を組み合わせたもので、心の中のプラスの部分に目を向けることを研究する学問です。最近ではひと言で言い表すのが大変なほどいろいろな分野に発展しています。従来の心理学は、うつや不安などのマイナスの部分に目を向け、それをゼロに近づけるように解決していく学問でした。

 一方、人間が本来持っている自然治癒力に目を向けることで、よりよく、今よりもプラスになるように生きていくことができるという考えから生まれたのが、ポジティブサイコロジーです。ポジティブサイコロジーでは、何も考えず単純に楽観的な思考でいればいいというわけではなく、現実を直視しながら、プラスの部分を少し多めに、マイナスの部分にもバランスよく目を向けることが大切であると説いています。

 アメリカの研究で、幸せ感の強い人は病気をせず長生きをするという研究が行われています。一例として修道院の尼さんたちは、皆同じ環境で、同じスケジュールで生活をしていますが、彼女たちの日記を検証したところ、日記にプラスの記述が多い人ほど長生きをしているという傾向が認められました。 プラスの部分に目を向けている人は、体の調子もよくなり、病気になりにくく、長生きすることにつながる。逆にいうと、マイナスの部分ばかりに目を向けていると、気力が落ち、免疫が落ちたり自律神経が乱れたりするということになります。

 このことは、ストレスがたまると風邪をひきやすくなるということにもつながります。つまりストレスをうまくコントロールすることができれば、病気にもかかりにくくなり、それが健康と長生きにつながってくるということがいえます。

 日本でも、仕事や私生活を楽しんでいる人ほど長生きできるという研究があります。高齢化社会で、ただ長く生きればいいということではなく、家族との人生や仕事を楽しみながら健康に長く生きられれば理想的です。日本やアメリカだけではなく、ヨーロッパなど先進国では幸福度指針も含めた今後の研究が注目されています。

プラスとマイナスの両面にバランスよく目を向ける

 もともと人間はよくないことに目を向けがちです。昔から生き延びていくためには危険を回避することが重要だったので、悪い兆候を見逃さないのは必要かつ重要な行動・思考でした。しかし、狩猟をしていた時代と現代とでは、生活環境が大きく異なっています。

 日本の会社の多くは、仕事に取り組む際にストレス負荷が大きく、心理的には常に交感神経優位でいるような状況が多いです。仕事や人間関係で起きる様々な出来事にどう対処していくかは、非常に重要なこと。それがうまくできないと精神的なバランスが崩れて適応障害でうつ状態になったり、神経性の胃腸炎を起こしたりするなど、心身の健康を害してしまいます。

 こういった時に役立つ心理療法として認知行動療法が注目を集めています。日本でも徐々に指導者が増えていますし、考え方の癖をいったん切り替えることで、同じ場面でもやる気が出て、パフォーマンスを上げることができるという研究結果も出てきています。また、薬を使わずに自分で自分を変えられることは自信になりますし、モチベーションが出てきた時の脳の働きなども検証されています。