石井 りな
フェミナス産業医・労働衛生コンサルタント事務所、(株)プロヘルス代表

 前回は、「健診後のフォロー(健診事後措置)」について、「職場と産業医」の取り組みを取り上げましたが、今回は、受診勧奨のその先にある「職場と医療機関」の連携による取り組みをご紹介します。

 2次検査を受けて、継続的な治療が必要になるケースは多くはありません。しかし、長期的な健康リスクの増大につながる方は多くいらっしゃいます。肝機能障害だけでも、それが糖尿病発症のリスクを1.3倍、腎機能低下のリスクを2.7倍に、また高血圧や脂質異常症、骨粗鬆症のリスクも増大させる可能性が指摘されています。実際に2次検査を受診したことで、健康管理に積極的に取り組む気持ちが芽生え、定期的なフォローアップを希望される方も出てきています。

 職場と産業保健スタッフがどんなに受診勧奨を頑張っても、本人が医療機関へ足を運ばなければ意味がありません。精密検査や治療が必要な従業員をいかに医療機関へつなぐか、企業と話し合い、具体的な取り組みを進めています。

 昨年は企業と連携を強化して、健診放置の削減に成功しました。ある企業では、人事が健診後のフォローを産業医面接など交えながら積極的に施策を実行しているものの、業務が多忙なこともあって、2次検査の受診率がなかなか向上せずにいました。毎年の健診結果では脂質異常や肝機能障害、メタボなどが目立ちはじめ、いずれ社員が年齢を重ねた時の将来的な健康リスクに危機感をもっていました。

 そしてもうひとつ、せっかく医療機関で2次検査を受けても、その結果どうだったのか? 就業上の配慮が必要なのか? 重症化予防に向けて社員は生活改善ができているのか? 受診内容は個人情報の問題もあり、その後の情報をうまく活かせずフォローできていない点にも悩まれていました。

 クリニックとしては、診察室でただ待っているのではなく、必要な人が適切なタイミングで医療にアクセスできるよう、予防医療の観点からアプローチを試みたいと考えました。そこで、人事部の方々と話し合いを重ね、2次検査の推奨をする期間に期限を設定すること、推奨受診先として九段下駅前ココクリニックをアナウンスする(あくまで医療機関の選択は自由で、本人に選択権があります)こととし、説明書類、同意書などの書式を整備しました。

健康面だけでなく、時間的、金銭的なメリットも

 社員の健康情報を活用し、職場において健康増進や重症化予防の施策、適切な就労上の配慮を行うために、本人の同意が得られたケースに限り、クリニックから人事(産業保健スタッフ含む)へ2次検査の結果を報告する態勢をつくりました。繰り返しになりますが、2次検査の受診先は、社員各々の選択に委ねられています。しかし、期限と具体的な受診先を提示して、本人と人事部間での報告書類の手間を減らすことで、受診率を向上し健診放置を削減し、社内での書類作成業務の削減も実現できました。