次に休んだ後、主治医の診断書が出て休職してから復職までの間に産業医面談が行われていませんでした。会社自体の規模が小さく、月に1度の産業医面談では予定調整ができなかったため面談が行われなかったようです。そのため情報が不足して復職の準備が足りなかった可能性があります。

 準備については以前のコラム「自分に向き合うことが復職成功への近道」などでも詳しい説明がありますが、生活記録票の記入や通勤訓練、また自身および主治医からの病状の把握や休職についての振り返りがあります。復職とはしたいと思ってすぐにできるものではなく、客観的に評価し、準備がそろったところで行う必要があるのです。これは精神疾患だけではなく身体疾患に関しても同じです。

 休み明けは体力が落ちています。通勤だけでも消耗します。家でなく外で8時間過ごせるかという判断も連続して行っているという実績が大切です。一時的にはよかったとしても、それを常態として生活できると判断するのは尚早かもしれません。

 病気休職からの復職とは本来、休業理由となった病気が治癒あるいは回復し、元の職場・元の業務で職責を果たせるようになることが目標です。ただし、今回のような適応障害の場合、職場と本人の期待値とのギャップが大きいと考えられますから、本人も職場も病気になる前と何も変わらずでは、いつかまた再燃する可能性が大きいでしょう。

 職場の配慮はもちろん、本人が再発予防としてストレスに対し自己対処できる対策を休職中に考えておく必要があります。病気を理由に職場の配慮ばかり求めるのもいけませんし(回復して復職している段階なのですから)、全く職場が配慮しないのも問題です。

スムーズな復職を実現するために

 今回のケースでは復職後の勤怠管理やフォローアップ面談もきちんとされていませんでした。復帰後半年は、事実確認のため産業医によるフォローのほか、人事部門・上長・本人による3者面談(あるいは2者面談)などを1月に1回程度は行うとよいでしょう。今回、職場での立場が変わり働き方の変化が大きなストレスになっており、2回目の復職時には職場での声かけやコミュニケーションを増やしました。部署は同じでも、それだけで本人の心理的負荷は軽くなりました。

 休職の原因も多種多様。解決方法も1人で対処できるものから組織として変えないといけないものまであります。このため、復職につなげるには本人、所属部署、人事部門、産業医がチームとなって対応する姿勢が大切です。産業医は復職を支援するとともに復職のために必要なポイントを皆さんに伝え、公平に指導しています。役職に就く人からパート勤務の方まであらゆる人に浸透することが大事です。復職の視点を会社全体にどのように行き渡らせるか積極的に考えていきましょう。

筆者:森 若奈
産業医・精神科医 フェミナス産業医事務所
監修:石井 りな
フェミナス産業医・労働衛生コンサルタント事務所、(株)プロヘルス代表
石井 りな(いしい・りな) 精神科専門医、産業医 / フェミナス産業医事務所、(株)プロヘルス代表
石井 りな

 千葉大学医学部卒。総合病院にて研修後、精神科病院や精神科クリニックに勤務。並行してうつ病リワーク施設や企業向けメンタルヘルス支援機関を経験。精神分析・力動的精神療法、認知行動療法などの精神療法も学ぶ。診療や企業での経験を通じて、従業員の健康対策は企業の生産性を高めるうえで必要不可欠だと確信。「健やかに活き活きと仕事に挑戦し続けられる社会」を目指し、精神科産業医の立場から企業を支援したいと思い、女性医師を中心にフェミナス産業医事務所を設立。現在、多くの企業で産業医として活動する傍ら、大学で費用対効果の高いメンタルヘルス対策についての研究も行っている。
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フェミナス産業医事務所

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。