井上 俊明
日経BPビジョナリー経営研究所主任研究員、日経トップリーダー編集委員

 経済産業省は8月22日、2016年度健康経営度調査の実施について発表した。「健康経営優良法人〜ホワイト500〜」と「健康経営銘柄2017」の認定・選定の資料とするのが目的で、特に「ホワイト500」は今回が初めての認定になる。

 健康経営銘柄が上場企業でなければ選定されなかったのに対し、「ホワイト500」は、「大規模法人のうち保険者と連携して優良な健康経営を実践している法人」を、2020年までに500社認定しようというもの。大規模法人とは、一般に、租税特別措置法の定義に沿って、「資本金などが1億円を超えるか、常時使用する従業員が1000人を超えるか」の法人とされる。

 未上場の中堅企業はもちろん、医療法人をはじめ株式会社以外の法人も認定の対象になり得るわけで、健康経営の優良企業である“お墨付き”を得る門戸が広がることは間違いない。なお、「ホワイト500」の認定は、経産省と日本健康会議が共同で行う。

狙いは求人面での効果?

 健康経営銘柄は、1回目は3500を超える全上場会社のうち493社が回答して22社が、2回目は573社が回答して25社が、それぞれ選定された。回答会社数は80社増加しているが、全上場会社数の2割に達しない。これを踏まえ、経産省は大企業に健康経営を普及させるための“二の矢”を放った格好だ。

 回答企業数が思うように増えなかった理由の一つは、1回目に回答した企業のうち181社が、2回目は回答しなかったことだ。経産省は、今回の健康経営度調査に当たり、この点でも手を打った。健康経営を継続して実践している法人を評価するためとして、今回回答した法人については次回の銘柄選定時に加点することにしたのだ。これにも、回答企業数を押し上げる一定の効果はありそうだ。

 「ホワイト500」のメリットについては、経産省のニュースリリースに特に書かれていない。しかし、「ブラック企業」の対極として「ホワイト」と名づけた以上、新卒学生のリクルートなど、人材採用面の効果が念頭にあると見られる。株価のように、市場や経済全体の動向に大きく左右される指標よりも、認定との因果関係が分かりやすいメリットだろう。応募してきた学生に聞いてみれば、その効果をうかがい知ることができる。

 ただ、それも学生や中途採用者に「健康経営」が十分認知されてのことだ。健康経営銘柄であれば、経済界の中で認知度を高めていけばおおむね事が足りたが、「ホワイト500」を人材採用面のメリットで売り出そうとするのであれば、学生やその親など、経済界の周辺にいる人たちにも、健康経営の意味や内容、その必要性などが知られていないと効果が低い。

 経産省には、健康経営をさらに広くアピールしていく責任が生じてきたといえよう。

井上 俊明(いのうえ・としあき) 日経トップリーダー編集委員、健康経営フォーラム
井上 俊明

 日経BP入社後25年近くにわたり、医療・介護分野を取材。1998年から5年間日経ビジネス編集部に所属し、税金、健康保険、年金などを受け持つ。2007年社会保険労務士登録。現在、中小企業や女性向けの媒体に労働関係のコンテンツも提供している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。