井上 俊明
日経BPビジョナリー経営研究所主任研究員、日経トップリーダー編集委員

 経済産業省が、健康経営の裾野を広げる目的で選定を進めていた「健康経営優良法人2017」の第1回顔ぶれが決まった。大規模法人部門(「ホワイト500」)が235法人、中小規模法人部門が95法人、合わせて330法人が認定された(認定企業名は経済産業省のホームページ参照)。

 この制度の目的は、健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、金融機関や就職希望者などを含め広く社会的な評価を受けられるようにすること。日本健康会議が「健康なまち・職場づくりの宣言2020」の中で掲げた、「健康経営に取り組む企業を500社以上に」「健康宣言などに取り組む企業を1万社以上に」の目標達成に貢献する狙いもある。

 認定基準は企業規模にかかわらず基本的に同じ。中小法人の方が要求される項目数が少なくなっている。一方で、定期健康診断の受診率は実質100%が求められ、中小企業で社長1人が健康診断を受けなくても、認定は受けられない。

少なかった中小部門、情報不足の申請書も

 健康経営優良法人2017の発表の場で挨拶した経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課の江崎禎英課長は、「本日、健康経営を顕彰する制度の全体像が完成した。中小企業には、健康経営ハンドブックや健康経営アドバイザーを通じて、健康経営のノウハウを提供している」と話し、認定に前向きに取り組むよう要請した。

 併せて江崎課長は、ホワイト500などの選定資料となった2016年度の健康経営度の調査で、726法人のうち32.7%が、「取引先の労働衛生や従業員の健康の状況を把握・考慮している」と答え、今回健康経営銘柄に選定された24社ではその割合が9割を超えているという結果が出たことを紹介した。健康経営の取り組みがビジネスにもプラスになるというわけだ。

 ただ、中小規模法人部門の認定数95法人は、1万社を目標とする健康宣言などに取り組む法人の上位法人の数として多くはない。今回が第1回目ということもあり、経済産業省は今年中に再度、中小規模法人部門の認定を行う方針。そのためもあり、認定発表会では「認定基準を満たすかどうかの判断材料となる情報が不足している申請書が多く見受けられた」と指摘し、具体的な事例を挙げて注意を喚起した。

 顕彰制度がひと通り完成したことで、健康経営は中堅・中小企業にどこまで広がっていくのだろうか。大手広告代理店電通の若手社員の過労自殺事件が大きな社会問題になり、一方で政府が働き方改革に取り組むという状況下だけに、取り換えの効かない社員を守るために、健康経営への積極的な取り組みを期待したい。

認定法人を代表して認定証を受け取る特定医療法人財団博愛会理事長の那須繁氏
井上 俊明(いのうえ・としあき) 日経トップリーダー編集委員、健康経営フォーラム
井上 俊明

 日経BP入社後25年近くにわたり、医療・介護分野を取材。1998年から5年間日経ビジネス編集部に所属し、税金、健康保険、年金などを受け持つ。2007年社会保険労務士登録。現在、中小企業や女性向けの媒体に労働関係のコンテンツも提供している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。