井上 俊明
日経BPビジョナリー経営研究所主任研究員、日経トップリーダー編集委員

 企業の健康経営の支援などを手がけるティーペックは、1500人の会社員を対象に、健康経営に関する意識調査を実施した。企業を対象にした健康経営の調査に比べ、従業員対象の調査はそれほど行われていない。そこで、この調査の主な結果を紹介しよう。

 調査は2016年8月下旬に、全国の20歳以上の会社員男女1500人を対象にインターネットで実施された。正社員だけでなく、契約社員や派遣社員も含まれている。

実際の施策と期待とにギャップ

 まず健康経営についての認知度は、「知らなかった」が71%を占めたのに対し、「内容まで知っていた」は6%、「言葉だけは知っていた」は23%で、決して高いとはいえない。

 また、勤務先の会社が実施している社員の健康保持・増進に関する取り組みや姿勢については、「満足している」「やや満足している」と答えた人の割合は21.7%で、「あまり満足していない」「満足していない」人の33.7%より10ポイント以上低かった。

 勤務先の会社が実施している健康保持・増進の取り組みで多かったのは、「心の健康づくりの支援」「健康や治療に関して相談できる窓口」「健康づくりに関するアドバイスなど、改善のための支援を行う疾病予防プラグラム」の順。いずれも200人以上の回答者の勤務先で行われていた。

 これに対し、今後期待する施策として回答者が挙げたのは、多い順に「がんと診断された社員への福利厚生や就労支援」「介護と仕事が両立できる施策」「治療のための専門医、専門病院の紹介、セカンドオピニオンの提供」。既にこれらの施策が実施されていると答えた回答者は、最も多い「介護と仕事が両立できる施策」でも100人強。会社の取り組みの現状と社員の期待との間には差があることが明らかになった。

 そのほか、会社に対する総合的な満足度について、全体では「満足している」「やや満足している」が30%強だったのに対し、会社の健康経営の取り組みや姿勢に「満足している」「やや満足している」と答えた回答者では9割近くに達し、健康経営への満足度が総合的な満足度を左右していることがうかがわれた。

 2017年には経済産業省と東京証券取引所が共同で選定している「健康経営銘柄」の3回目の公表や、同省が中堅中小企業への健康経営の浸透を狙って新たに始めた「健康経営優良法人」(ホワイト500など)の1回目の発表が予定されている。健康経営に取り組む企業がますます増えてくると考えられる中で、この調査結果は、その有効性を高めるうえで示唆に富むものといえるだろう。

井上 俊明(いのうえ・としあき) 日経トップリーダー編集委員、健康経営フォーラム
井上 俊明

 日経BP入社後25年近くにわたり、医療・介護分野を取材。1998年から5年間日経ビジネス編集部に所属し、税金、健康保険、年金などを受け持つ。2007年社会保険労務士登録。現在、中小企業や女性向けの媒体に労働関係のコンテンツも提供している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。