ある食品販売業で大規模な人事異動があり、優秀な売り上げを誇っていた郊外大型店のA店長が、本社勤務の開発部次長に昇格しました。それに伴い、新しくB店長が赴任しました。二人はどちらも40代前半の男性です。

 もともとタワーマンションなどが多い地域にあり、恵まれた条件の店舗であることから、B店長になってからもしばらく売り上げは順調に推移していました。ところが、1年もたつと徐々にではあるものの売り上げが落ち始め、3年目後半には明らかに業績が悪化していきました。

 焦ったB店長は、部下たちに「前任者と比べ、自分の仕事のどこに問題があるか」について率直に意見を求めました。しかし、部下たちからは取り立てて否定的な意見は出ませんでした。実際に、B店長はA店長にも増して熱心に働いていると部下の目には映っていたようです。

 特に、お客様からクレームが上がった時や、重要商品に欠品が出た時などの処理を部下に押しつけることなく、自ら先頭に立って問題解決に当たってくれるので、むしろ部下たちは「いい店長が来た」と喜んでいたくらいです。

 恐らく、この店舗で徐々に業績が悪化してきているのは、B店長のこの働き方に原因があるのではないかと思います。B店長はあまりにも目の前の緊急タスクに力を注ぎすぎて、もっと大事なことがおろそかになっているのです。

 確かに、クレームや欠品という問題は放置しておけません。素早い対応が必要なことは言うまでもありません。それらは「重要かつ緊急の仕事」と言えます。しかし、長い目で見た時に、もっと重要な仕事があるのです。

 例えば、中長期の販売戦略、季節商品の扱い、部下たちの仕事をより効率的なものにするための仕組み作り、お客様の声を反映した店舗改革などは、「今すぐ」という必要はなくても、必ずやらなくてはならないことです。

 B店長は目の前の仕事に振り回されすぎて、こうしたことに時間を割けないでいたため、いつの間にかビジネスを先細りさせてしまったのです。

 業種に限らず、多くのプレーイングマネジャーがこうした危うい状況に陥っています。

 たいていのマネジャーは「重要かつ緊急の仕事」はきちんとこなしています。こなさないわけにはいかないからです。