先日、東京地裁で電通の違法残業事件の判決が言い渡され、罰金50万円が課されました。そのニュースを放映するテレビ画面には、汐留の本社ビルがたびたび映し出されました。「これ以上、残業はさせません」という経営サイドの意思表示でしょうか、夜10時になると一斉に電気が消され、ビル全体が真っ暗になるのです。

 記者会見に臨んだ同社の社長も「従業員の残業を減らすために努力する」と明言していました。

 しかし、東京オリンピックのような大イベントを控え、広告代理店の仕事はますます増えるでしょう。「残業を減らそう」というスローガンだけではどうにもなりません。労働環境の改善に向けた具体的行動が必要なことはいうまでもありません。

 電通に限らず、どこの企業も従業員の残業を減らす努力をしているのは、これからの時代、そうしなければ人が辞めてしまうからです。新卒採用の現場では、学生から必ずといっていいほど「残業はあるんですか」という質問がなされます。残業をさせているようでは、いかなる大企業も将来は危ういのです。

 もちろん、政府主導の働き方改革の影響もあるでしょう。しかし、政府が働き方改革を推し進める理由は、単純に「働き過ぎ」を防ごうというものではありません。企業が従業員に対し、世界基準の働き方をさせなければ、日本経済そのものが成り立たなくなるからです。

 これから日本の人口は激減し、マーケットが縮小していくのは明らかです。税収を確保するためには、大きなマーケットを求めて日本企業が世界に進出していくことが求められます。しかし、一部の製造業を除いて、まだまだグローバル化は進んでいないのが現状です。

 世界に出て行くためには、日本企業独特の働き方を変えていく必要があります。どの国に社屋や工場を造っても、どの国の人々を採用しても、同じように仕事が回らなければ頓挫してしまいます。

 また、日本においても従業員の確保が難しくなり、外国人の雇用が当たり前になっていきます。やはり、どの国の人々を採用しても仕事が回らなければダメなのです。

 この時、外国人を日本人のように働かせようとしてもうまくいかないのは子供でも分かります。

 上司から残業を命じられれば素直に従い、短い夏休みしか取れなくても文句を言わないのは日本人だけで、そんな働き方は外国人には通用しません。いえ、日本人であろうとも、若者には通用しなくなっています。