本連載を読んでくださっているみなさん自身、覚えがあると思うのですが、なぜか日本企業では、入社して数年たった社員に対する教育がほとんどなされません。

 新卒の入社時においては、多くの企業が立派な研修を行います。

 大企業ではおおむね2週間から1カ月かけ、社会人としての基本、および会社の業務について徹底的に教育されます。

 ある損害保険会社にいたっては、3カ月の長きにおよび研修が行われます。最初の1週間は合宿形式で新入社員同士のコミュニケーションも兼ねた社会人研修を。その後、OJTで各部署を回りながら具体的な仕事の進め方を。最後の2週間は英語学習の集中講座をと至れり尽くせりです。

 こうした研修を受けて入社した新入社員は、「これからも丁寧に教育してもらえるのだろう」と期待することでしょう。しかし、たいていの日本企業において、入社時の研修が「最初で最後の教育らしい教育」になっているのです。

 そのため、入社後数年たった社員たちは「それで、これからどうすればいいの?」「自分はどういうふうに成長していけばいいの?」と困惑することになります。実際にどうしていいかわからずに、右往左往している社員がとても多いのです。

 ところが、会社のほうは相変わらず、「いつまでも新人じゃないんだぞ」「そんなこと、いちいち教わろうとするな。見て覚えろ」と、前時代的な精神論に頼っています。

 いまのマネジャークラスがいつまでたっても楽にならないのは、こうした間違った思い込みによって、せっかく経験を積んでいる社員が戦力になってくれないからです。

 これからの企業には、ミドルクラスを含めた、全社的な教育体系の構築が必須です。どれだけ経験を重ねても、どのような立場になっても、適切な教育がなされなければ成長できません。あなたが人事部の責任者でないのなら、会社の研修システム自体を変えることは難しいでしょう。でも、あなたのチームの教育体系を構築することはできるはずです。

 教育体系というと、すぐに「マニュアルならありますよ」という答えが返ってきます。実際に、大企業は実に立派なマニュアルを作っており、そのための専門部署が設けられているほどです。

 では、入社して数年たった人間が壁にぶち当たった時、その分厚いマニュアルをひもとき、それを読みながら成長できるのでしょうか。現実問題として、そんなことは無理です。私が見ている限り、そうしたマニュアルはほとんど活用されることがありません。