石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 私のセミナーに参加してくれた40代のマネジャー職から聞いた実話です。彼の名を、仮にT課長としましょう。

 T課長は、大手消費財メーカーの企画部門で4人の部下を抱えています。でも、本当だったらもう少し大所帯を任されていたかもしれません。というのも、この2年間で3人の若い部下が辞めてしまったのです。

 特に、3カ月前に退社した25歳のK君について、T課長は今もトラウマを引きずっているようです。

 入社3年目になるK君にそろそろ一人で責任ある仕事を進めて欲しいと期待していたT課長は、「今のうちに小さなミスは指摘しておこう」と考えました。なかでも、会社の上層部に上げる報告書の書き方などを細かく指導しました。「自分が口を出さなくても大丈夫なように育ててあげたい」と思ったからです。

 ところが、いくら言ってもK君が同じようなミスを重ねるために、T課長は思わず口にしました。
「いったい何考えてんの? 前にもこれ、さんざん言ったよね。やる気あるの?」

 すると、K君は黙りこくり泣き出してしまったのです。驚いたT課長は「今日はもういいよ、明日また話そう」と言ってK君を帰しました。しかし、その「明日」は来ませんでした。K君は翌朝から会社に来なくなり、そのまま退社してしまったのです。

 T課長は怒鳴ったわけでもなく、「K君のためを思って」注意を与えたに過ぎません。しかし、K君は「人格を否定された」と感じたようです。

 T課長や私の世代では考えられない反応を、今の20代は示します。しかし、そのことを嘆いている場合ではありません。とくかく彼らを辞めさせないようにすることが、マネジャー職には求められているのです。