石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 日本全国に手広く展開している大手外食チェーンX社では、社員の研修に力を入れています。業績を伸ばせる人材を育てたいというのはもちろんですが、店長および候補者たちのコミュニケーション能力アップが喫緊の課題になっているからです。

 X社では、各店長は本社採用のマネジャー職社員が担っています。店長以外は、現地採用のアルバイトやパートだけという店舗も多く、いかに彼らとのコミュニケーションを深めるかは、店長の重要な仕事となっています。

 Yマネジャーは、大阪近郊の中型店の店長を任されて2年になります。出身は東京ですが、ときどき慣れない関西弁を使っては従業員に笑われています。それでも、自分から馴染もうとしている姿が受け入れられているのか、従業員とのコミュニケーションは非常に上手くいっているようです。

 前の店長のときよりも、昨年、今年と売上もアップしているだけでなく、従業員の離職率が下がっていることが本社から高く評価されています。今、外食チェーンではアルバイトやパートの確保がとても難しくなっているのです。

 しかしながら、誰もがYマネジャーのようにできるわけではありません。「もっと頑張れ」と発破をかけることで「モラハラだ」と言われてしまったり、飲み会などにしつこく誘って嫌がられたり、なかなか現地採用の従業員とうまくコミュニケーションがとれない人が増えているのがX社の悩みです。

 実際に、現地採用従業員の協力が得られないことで業績が落ち、ノイローゼになって退社してしまうマネジャー職もいます。

 そうしたこともあって、本社人事部では、6か月に1回の大きな研修を行っています。

 半期の決算報告を終えた時期に、全店長と店長候補の本社社員を集め、外部トレーナーを招聘して2泊3日の泊まり込みで行います。

 会場までの交通費やホテル代もすべて会社が持つので、かなり大きな出費となります。それでも人事部がこれをやり続けているのは、その後しばらく店長たちの士気が維持されるように感じるからです。

 決算報告の数字は、店長たちにとって嬉しいものとは限りません。なかには、かなりへこんでいる人もいます。それでも、パッショネイトな外部トレーナーの研修を受け終わる頃には、店長たちに「スイッチ」が入るのが傍目にもわかります。

 また、新しく店長となっていくであろう若い社員たちにとっても、いい経験となっているのは間違いないでしょう。

 だから、X社では今後もこのスタイルを続けていくつもりでいます。

 さて、本当にX社の研修は機能しているのでしょうか。私には、とてもそうは思えません。研修を終えた店長たちは、一時的に喚起した「やる気」でなんとか店を維持しているだけであって、根本的な解決にはつながっていません。