石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 大手部品メーカーの企画部でマネジャー職を務めるA氏は、根っからの仕事好きです。特に、取引先相手とアイデアレベルの意見を出し合ったり、その可能性を探ったり、実現に向けて奔走する時間が大好きです。

 ただ、そうした仕事はまだ直接には売り上げにつながらないため、どうしても「自分の時間」を使うことが多くなります。就業時間外に取引先と飲みに行ったり、休日に企画提出のための資料を作成したりということもしょっちゅうです。

 でも、それも全く苦にはなりません。誰に命じられたわけでもなく、自分がそうしたいからやっているのです。

 そうしたA氏の姿勢は会社からも評価され、「新しいことを思いついたら、まずはAに投げてみろ」と言われるほどになっています。

 生活のためにも続けなければならない仕事を、嫌々ではなく好きでやっていられること、そして、それを会社から評価してもらえることについて、A氏は「自分は幸せだ」と思っています。

 その点、若い部下たちは心配です。まだ20代だというのに、どこか冷めていて、早く帰ることや休むことばかり考えているように見えます。

 「彼らは仕事の面白さを分かっていないんだ。どうしたら、それを教えてあげられるだろうか。でも、うるさいことを言えばパワハラだととられかねないし……」と、もんもんとしているのです。

 あなたは自分の仕事を好きでしょうか。好きだとしたら、A氏のような悩みを抱えているかもしれませんね。もし「実はそうでもない」と思っているなら、これからの時代、かえっていい上司になれるかもしれません。

 本連載でもたびたび指摘してきましたが、人が仕事を頑張れるのは、一人ひとり個別の理由があります。かつては「給料が上がる」とか「昇進できる」ということが人々の大きなモチベーションになっていましたが、今は「自分を認めてもらう」ことを望む人が多いのです。

 というと上司世代は、「認めてもらいたいなら頑張れ」という発想になりがちなのですが、若者たちは「ありのままの自分」を承認してほしいのです。もちろん、彼らにも成長意欲はあります。ただ、そのために無理をするのではなく、自分らしく働いて、自分らしく成長していけたらいいなと思っています。

 そういう彼らにとって、「仕事を好きになれ」と言われるのは苦痛以外のなにものでもありません。実際に、本音で「仕事が好き」と答えられるビジネスパーソンは1割もいないのではないかと思います。9割にとってベストな落としどころは、「仕事は好きじゃないけれど、職場環境がいいから続けられる」というものでしょう。