石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 大手小売業で店長を務めるA氏は、若いスタッフが店舗の固定電話を取りたがらないことに頭を痛めています。

 A氏が働く小売りの現場では、いくらコンピュータ社会になっても固定電話がよく使われます。足りなくなった商品を他店舗から融通してもらったり、厳しいクレームが上がった時の情報を得たりといった急ぎの案件では、メールよりも電話で話しをした方が速くて確実だからです。また、パソコン世代ではない上の人たちも、何かあれば固定電話に連絡を入れてきます。

 お互いの携帯電話番号も知ってはいますが、通話記録が残らない携帯電話でのやりとりを会社が嫌っており、さらには各人が顧客対応中であることも多いため、仕事の重要な連絡は固定電話に入ることがほとんどです。

 ところが最近、「A氏の店では、全然、電話がつながらない」と、他店舗から指摘を受けることが増えました。バックヤードにある事務室のほか、レジなどにも子機が置かれているので、誰も気づかないなどということはあり得ないのですが、出ないというのです。

 先日、A氏自身、顧客対応中にずっとレジで鳴り続けている呼び出し音にハラハラさせられることがあり、その日の閉店後に若いスタッフを集めて怒鳴ってしまいました。

 「電話には気づいた人間がすぐに出ろと言っているだろ。なんで、そんな簡単なことを守ってくれないんだよ!」

 スタッフはみな、顧客対応も問題なくこなしており、特に仕事ができないわけではありません。どうして電話くらい取ってくれないのか、不思議でならないのです。

 実は、仕事の分野を問わずこうした声が増えています。若者が「電話を取れない」のです。「会社で電話を取らされるのが怖くてたまらない」という若者が相当数存在し、それが原因で辞めてしまう人すらいます。

 今のマネジャー世代は、入社したら「まず電話に出ろ」と教わりました。緊張しながらもそれができたのは、家に固定電話があり、親への取り次ぎなども慣れていたからです。

 しかし、若者たちは子どもの頃から携帯電話文化のなかで育っています。自分自身も家族も携帯電話を持っているために、誰からかかってきたか分からない電話を取り、家族につないだり、用件を聞いて伝言を残したりという経験を積んでいません。

 家でもやったことがないことを、慣れない会社でやらされることが、かなりの苦痛になっているのです。