私はこれまで、行動科学マネジメント理論を活用し、多くの企業において大多数を占める「普通の」従業員の能力アップに寄与してきました。

 そこで口を酸っぱくして言ってきたのが、「やる気に頼った根性論は捨ててくれ」ということでした。本連載で何度も述べてきたように、大事なのは結果につながる行動です。その行動を具体的に教えてあげなければ、従業員はどうしていいか分からないのです。

 もちろん、意識の高い経営陣やマネジャーたちは、すでにそのことに気づき、仕事の教え方を変えています。先日も、ある中堅部品メーカーで、自社のマニュアルの見直しが行われました。担当者は、檄を飛ばすような文章や、曖昧な表現を徹底的に排除し、現場の仕事を具体的行動に落とし込む作業を進めていました。

 それを見た私は、さらに、かみ砕いた表現にするようアドバイスしました。というのも、とてもよくできたマニュアルにはなっていたものの、多少の読解力が必要とされるように思えたからです。

 実は、若者たちが、そもそもマニュアルに書かれた文章を読みこなせないという事態があちこちで起きています。仕事力以前の、読解力、国語力という問題に、マネジメントの現場は直面しているのです。

 『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)で注目を浴びた国立情報学研究所教授の新井紀子氏は、東大合格能力を有したロボット「東ロボくん」を開発するプロジェクトリーダーも務めていますが、一連の研究の過程で、日本の大学生(国立・私立)の学力を調査する機会を得ます。

 そこで新井氏は、今の大学生にあまりにも読解力が不足していることに驚きます。

 以下、新井氏の著書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)から、ある問題と解答について、その内容を一部、引用させていただきます。

 「公園に子どもたちが集まっています。男の子も女の子もいます。よく観察すると、帽子をかぶっていない子どもは、みんな女の子です。そして、スニーカーを履いている男の子は一人もいません」

 この文章について、以下の3つの項目が、それぞれ確実に正しいと言えるか、そうでないかを考えてもらうという問題です。

(1)男の子はみんな帽子をかぶっている。
(2)帽子をかぶっている女の子はいない。
(3)帽子をかぶっていて、しかもスニーカーを履いている子どもは、一人もいない。

 正しいのは(1)のみです。私の世代からすると「そりゃそうでしょ」と言いたくなります。ところが、全体の正答率は64.5%で、私大のBクラス以下では5割を切ったそうです。

 おそらく、この文章を読み解く時のポイントは、「帽子をかぶっていない子どもは、みんな女の子」だからといって、それは「帽子をかぶっている女の子はいない」という意味ではなく「帽子をかぶっている女の子もいるかもしれない」と理解できるかどうかにあります。