石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 中堅金融機関で営業部門の課長職を勤めるA氏は、今年42歳。30代の部下、20代の部下、それぞれ2人ずつを抱えています。

 30代の部下たちは、どちらかというと独立意識が強く、営業活動も早くから一人で行いたがりました。言ってみれば生意気なところがありました。

 だからA氏は、次の世代である20代を迎えたときは、あまりうるさがられることがないように教育しようと考えていました。しかし、実際に彼らと一緒に働いてみると、想像していた以上に人なつっこいところがあり、営業方法についてレクチャーすれば素直に聞くし、飲みに誘うと喜んでついてきます。

 それに、彼らはA氏が忙しくしていると献身的に手助けしてくれます。非常にありがたいと思う半面、最近はとまどう気持ちも生まれています。自分や30代の部下たちと比べて、あまりにも野心に欠けるように思えてならないからです。「このままで大丈夫なんだろうか」と心配になってしまうのです。

「つくし世代」の時代背景とキーワード「それな」

 今の29歳以下は、1992年以降に小学校に入学した世代です。彼らを「つくし世代」と名付けた藤本耕平氏は、今の20代は相手が喜ぶように振る舞う、つまり尽くす傾向があると述べています。

 藤本氏は、その著書『つくし世代』の中で、1992年という年には大きな意味があると指摘しています。

 この年は、小学校の学習指導要綱が改訂されて、相対評価ではない絶対評価が採用されました。

 また、専業主婦のいる世帯数を、共働き世帯数が上回ったのもこの年だそうです。

 さらには、バブル崩壊の年でもあります。

 彼らは、生まれたときから「失われた20年」に身を置いていて、自分が所属する国や企業などが成長し、それにつれて自分の生活が豊かになるなどということは想像できずにいます。

 だからといって、ふて腐れて人生を投げてしまっているわけでもなく、そうした環境の中で、「自分しか頼りになるものはない」と悟り、自分なりの幸せを見出そうとしているのです。

 しかしながら、「自分しか頼れないのだから他の人たちを駆逐しよう」とは考えません。日本の経済成長を見ていないため、そうした競争原理の先に自分が報われる世界があるとは考えません。