石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 国が主導する「働き方改革」を待つまでもなく、企業では従業員の「働かせ方」について相当に神経を使わざるを得ない状況になっています。

 先日も、ある大企業でマネジャー職が人事部に呼ばれ、「退社のタイムカードを押した後の従業員には一切の業務をさせないように」と通達を受けました。

 もともと、部下にサービス残業などさせないようにしていたA課長は、会社の神経質なまでの対応にいささかうんざり。ところが、その理由を聞いて驚きました。

 なんでも、営業部のB課長が、就労後に廊下を歩いていた部下に声をかけ、営業数字などについて確認したところ、後日その部下から人事部に苦情が入ったそうです。「タイムカードを押した後も上司との打ち合わせをさせられた」というものでした。

 たしかに、気づいた時には20分ほど立ち話をしていたようです。しかし、その時のB課長には「打ち合わせをしている」という感覚はありませんでした。

 一昔前なら、こんなことを言いだす部下に対して「辞めちまえ」と言えたかもしれません。しかし、これからはそうはいきません。人材が圧倒的に不足する時代において、若い従業員は企業の財産であり、「辞めさせないマネジメント」を行っていくことが上司たちに求められているのです。

 この企業では、4月から残業の「事前申告制」も導入されました。事前に申告していない残業は認められないというわけです。となれば、いきなり入ってきた仕事や、トラブルで予定通りに終わらなかった仕事について、部下たちの残業で対応することができなくなります。

 たくさんの仕事を抱えるマネジャーたちにとって、手足を縛られたかのような状態になっているのです。

 こうした事例に限らず、どこの企業でも同様の動きは見られ、しかも不可逆的なものとなっています。経営陣や管理職は、時短を進めつつ効率的に生産性を上げていかねばなりません。

 しかしながら、すべてを抱えたままそれをやろうとしたら、間違いなくマネジャーはつぶれてしまいます。「劣後順位」を見極め、「やらないこと」を捨てていく能力が、これからのマネジャーには必須なのです。

 私の場合も、いろいろ仕事が重なり「絶対に無理」という状況に追い込まれることがよくあります。そんな時は、スマホと手のひらサイズの付箋とペンを持ち、「30分だけ」と時間を決めてお気に入りのカフェに出向きます。

 そして、そのカフェでコーヒーを飲んでゆったりした気持ちを取り戻し、やおら劣後順位をつける作業に入ります。