石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 アメリカに工場を置く自動車部品メーカーでは、人事考課の際に日本の本社同様、従業員一人ひとりとマネジャーが面談するシステムをとっています。

 昨年から副工場長として赴任したA氏は、直属の部下となった約30名の現地採用従業員の面談を担当することになりました。

 A氏は、これまで日本でやってきたように面談に望みました。すなわち、日頃からの働きぶりについては感謝し、そのうえでさらなる期待を述べ、適正な昇給ラインを提示するというものです。

 ところが、日本では問題なく進んでいたそのやり方が、アメリカではなかなかうまく行かないことを痛感するはめになりました。「もっと頑張ってくれることを期待している」などと言うと、「期待されていることはすでにやっている」とか「これ以上求めるのはおかしい」と反発されることが多いのです。

 A氏の発言が極めて日本的な曖昧さに基づいているのに対し、現地従業員たちの主張の拠り所となるのがジョブ・ディスクリプション、つまり「職務記述書」です。

 ジョブ・ディスクリプションには、従業員それぞれの職務内容、責任、権限の範囲などが詳細に書かれています。従業員はそれに従って動いているのです。

 日本企業ではまだなじみが薄いかもしれませんが、欧米や中国では非常に重要な企業と従業員の約束事と見なされます。ここに書かれていないことを「やれ」と言われたら反発するのも当然なのです。

 もちろん、日本的経営の良さもあり、なにもかも欧米流にすべきだなどとは私もまったく思っていません。しかし、ジョブ・ディスクリプションについて、日本企業はもっと積極的に、かつ早急に導入すべきでしょう。