石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 2つの高級食品スーパーに勤めた経験のある40代の女性から、面白い話を聞きました。消費者という立場から見ると、どちらも似たような商品をそろえているチェーンなのですが、働いてみると、その社内文化が全く違うのだそうです。

 スーパーが扱う食品は日常的なものだけでなく、イベントものも多くあります。お正月商品はもちろんのこと、節分には恵方巻き、お彼岸にはおはぎ、クリスマスにはケーキなど、その時に限って大量に売れる食品があります。

 稼ぎにつながる一方で、売れ残ったらムダになるし、かといって足りなければ大きな機会ロス。それに、天候によってもお客さまの入りは左右されるので、イベント食品の仕入れはなかなか難しいものがあるのだそうです。

 彼女が最初に働いたAスーパーでは、仕入れの判断はすべて店長や売り場責任者の「勘」に任されていたそうです。そのため、一発勝負のイベントでは、いつもハラハラドキドキの展開となりました。

 とくに、店長や責任者が転勤してきて間もなかったりする場合、新しい土地での習慣や、それにまつわる売れ筋商品などがわかっておらず、大きく予想を外してしまうことが多々あったそうです。それでも、「食品を扱うとはそういうことだ」と教えられてきました。

 そんな彼女が、出産を機に退職。引っ越した土地で、Bスーパーが従業員を募集しているのを見て働きはじめました。

 すると、驚くことにそこでは、本部が管理しているデータに基づいてほとんどの仕入れが行われていたのです。イベント商品はもちろんのこと、いつも棚に並べてある商品についても、レジと連動したデータシステムによって売上の詳細が毎日本部に送られ、それを見た専門職の人間が、顧客の声や天気予報なども勘案したうえで、各店舗に細かく商品を分配していました。

 だから、店舗で働く人々は、本部の判断で送られてきた商品を並べ、マニュアルに決められたサービスでお客さまに接していればよかったのです。

 彼女は、最初こそ「現場の自主性が無視されているようで面白くない」と感じたそうですが、だんだん考えが変わっていったといいます。

 というのも、Aスーパーに比べBスーパーは無駄も機会ロスも明らかに少なく、また、現場の人々が「仕入れ予測が外れたらどうしよう」というストレスから解放され、お客さまへのサービスに集中できていたからです。