石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

 「部下はしっかり育ててほしい。でも、時間をかけずにやってほしい」

 いまの企業が、マネジャー職に求めているのはこういうことです。「ふざけるな」と言いたくなりますよね。そんな都合のいいことができるなら、誰も苦労しないと。

 さまざまな企業のマネジャーたちのハードワークを目の当たりにしている私としては同情を禁じ得ないのですが、客観的に考えてみるとどうも不利なのはマネジャーたちなのです。

 というのも、「早く結果を出せる人材は育ててほしいけれど、そのために残業させたりしないでほしい」と会社は願っており、当の部下も「早く結果を出せる人間に育ててほしいけれど、そのために残業させられるのは嫌だ」と考えているからです。

 この点において、会社と部下たちの意向は見事に一致しているのです。その「育成」を実際に行う立場のマネジャー職は、「就業時間内に部下を育てる」努力をしないわけにはいきません。

 どうしてこんなことになっているのか考えてみると、その要因はいくつかあります。「時代の変化」もそうでしょう。とにかく時代は変わりました。私が社会人になったばかりの頃は、残業なんて当たり前。定時に帰りたいなんて言ったら、それだけで「仕事ができない」と決めつけられかねませんでした。休日出勤だって、上司から命じられたら断ることは容易ではありませんでした。

 私もまだまだ第一線の働き盛りにいるつもりですが、そんな私の過去の経験はまるで「竜宮城」のエピソードのようです。たった20年くらいの間に、日本のビジネス環境は激変し、あなたたちマネジャーは、その波をもろにかぶっている世代といえます。

 あなたの上司世代は、過去のやり方でなんとか自分のビジネス人生を終えようとしており、部下世代は、まったく新しい価値観で仕事に臨んでいます。あなたたちマネジャー世代はちょうど中間にあって、その切り替えポイントをいきなり握らされてしまったわけです。