システムとプロセスの統合が支える企業文化の浸透

細川:オラクルはいろんな企業を合併されてきたので、企業文化が違う人たちが集まっていると思いますし、おそらく中途採用の方が非常に多いと思うのですが、オラクルという会社の社員のベースというか、オラクルイズムのようなものはどうやって作って、どうやって共有されているんでしょうか。

遠藤:最初にGEとの比較の話がありましたが、GEの場合は企業風土を統一することで一体感を醸成しマネジメントをしていました。一方で、オラクルはシステムとプロセスを統一することで成功している会社です。買収をする際にも人事制度を最初に統一します。同じデータベースを使って、同じ給与構造にして、オラクルの既存の職種にマッピングします。社内の職種にはコンピテンシーや評価の在り方が全世界共通の基準で紐づいています。職種ごとにコンピテンシーや求められていることが明確になっていて、標準化されたプロセスになっています。その標準化されたプロセスを経ることで、自然とオラクルのやり方に統合していくのです。

GEの場合は統合する時に、例えば「チームワーク」とか「境界なく働きなさい」いったバリュー(価値観)から統一しますが、オラクルの場合は、こういうシステムとプロセスの統一で統合をしています。GEとは異なるオペレーティングメカニズムを持っています。「オペレーティング・プリンシパル」という、プロセスのガイドラインがしっかりと作成されていて、このプロセスを徹底するのです。

非常に分かりにくいですが、例えば、承認プロセスもグローバルで統一されたものがあり、その通りにやっていくと、誰が権限を持っていて、どういう判断で物事が決められるのか、というのが、分かるようになっています。プロセスや仕組みを明確にし、それを実行することでオラクルスタンダードに合わせてくださいという方法ですね。

オラクルの主なカルチャーは3つあって、1つは「セルフサービス」というカルチャーです。自分で自分のことはやりましょうということですね。2つ目は「標準化(standardization)」。あらゆるものはオラクルグローバルで、同じ仕組み・プロセスで動かします。もう1つは「ガバナンス」です。この3つが手続き一つひとつに組み込まれています。

細川:仕組みは本社で一括して作っているんでしょうか。

遠藤:そうです。多くの外資系では、本社主導のイニシアティブが、やり方とともに指示されることが多いのですが、オラクルはプロセスはしっかりしているけれども、やり方までは指示されません。仕組み・システムやプロセスは統一していますが、あとは現場や各国で起こっている問題はそこで解決するようになっています。

細川:ある程度、現場に判断が任されているんですね。

遠藤:ガバナンスがしっかりしている中での権限委譲なので、自由度は高くありませんが。プロセスや標準化など、仕組みをガチッと入れて、その中で動いてください、その中で問題があれば言ってください、どうやって解決するかは都度考えましょうという考え方ですので、問題の対応の仕方が非常にプラティカルです。すべてはプロセスの標準化からカルチャーが出来上がっているというのが分かりやすい言い方かもしれませんね。

細川:それは、もともとのオラクルにあったやり方なんでしょうか。

遠藤:買収は2005年くらいに、ピープルソフト買収を皮切りに始まったのですが、その時もうすでにひとつの仕組み、システム、データベース、プロセスという体制になっていました。それはおそらく何年か前からM&Aを予測してそういう形に持ってきていたんだと思いますね。もともとあったカルチャーに他社が加わる際、瞬時にプロセスや統合を完了させます。これは圧倒的なスピードで統合していきます。

本社で買収のアナウンスがあると、例えば日本だと半年くらいで法的に統合します。その統合予定日の1カ月くらい前に同じデータベース・仕組みに変え、ベネフィット(福利厚生)も同じにするんです。当然ながら法令は遵守しますが、あらゆることをオラクルに合わせます。

まずはデータベースは共通のものを使い、情報をまとめる、それからアプリケーションで標準化していますから、弊社の事業をうまく反映させたビジネスモデルになっていたんだと思います。統合される側の社員は様々な複雑な思いを持っていますが、それはそれで、人事がチェンジマネジメントの支援をしたり、話を聞くように担当人事を配置するなど、人で補っています。オラクルが圧倒的に強い点は、ビジネス特徴を際立たせ、をあらゆる場面で強く表現するというところにあると思います。

細川 馨(ほそかわ・かおる) ビジネスコーチ(株) 代表取締役
細川 馨

 ビジネスコーチ(株)代表取締役。外資系生命保険会社に入社し、支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年にビジネスコーチを設立。ビジネスリーダー育成のスクールを主宰。著書に『「右腕」を育てる実践コーチング』(日本経済新聞出版社)『生保最強営業マンの実践コーチング塾』(日経BP社)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。