ナックの管理職の理想の姿とは?

細川:会社が大きくなってくると、管理職の育成も大事になってきますよね。

寺岡:社内でできる部分とできない部分がありますので、できない部分はどんどん外の講演会やセミナーでスキルアップしてもらいました。内部で教える分は半分くらいですね。外の資格を取ったり、勉強することを薦めました。

細川:ナックさんで理想的な管理職とはどんな人でしょうか。

寺岡:結局、その人がどんなことを考えているのか、ある程度読める人ですね。今、どういう問題を抱えているのかが先に分かる人です。私も「おい、そこに辞表入れてないか」と何度も当てたことがあります。普段から、顔を見て話をしているとすぐに分かります。いつも目を合わせる人が合わせなかったりするのであれば、それは仕事なのか家庭なのか、何か問題があるということです。人間いつも上手くいくわけではありませんし、常に120%の力が出せるわけでもありません。それに気づいて早く解決してあげる、煽って、叱って、それだけが管理職の仕事ではありません。それから、その人にとって何が足りないのかを判断できる人が一番いい人だと思います。

細川:難しいですが、感性のある人ということですね。

寺岡:確かに難しいですが、現場でいい数字をあげてきたから管理職になれるかといえば、そうではありません。いい数字をあげても管理職にはなれない人もいます。

細川:お客様の状況を見抜ける人とも共通点がありますね。

寺岡:ありますね。やっぱりお客様から解約を人より多くもらう人は、どこかに問題があります。新規でご契約いただいても、長く続かないお客様もいらっしゃいます。結局、それはお客様と十分なコミュニケーションがとれていないということです。我々の場合、商品で解約・契約になるよりも、人で解約・契約になるケースが多いですから。

住宅もそうですね。お客様が1軒住宅を頼まれるのに、モデルルームに10カ所は行かれます。その中で出会った営業マンに2人良い人がいたとしても、最終的には1人しか勝たないわけです。その1人になるにはお客様との信頼関係が大切で、安いからといって、お客様になってくれるわけではないんです。我々は本当に人の商売ですから、いかにコミュニケーション能力を高めていくかにかかっています。

細川:課長クラスの管理職にはそういう営業の人を育成する力があって、営業の顔色や行動を見ながらアドバイスできる人が理想的ということですね。

寺岡:そうですね。

細川:理想的な部長クラスや役員はどのような方ですか?

寺岡:我々の仕事は徹底したB to Cですが、扱っている商材がみんな違います。私は会社が小さい頃に入りましたから、ほとんどの部門を経験してきました。野球でいえば、ピッチャーもやって、内野も外野も、コーチも監督もやりました。ひとつだけやっていないのは、経理部長にあたるキャッチャーです。だから社長を辞めたら、経理部長をさせろとよく言っていたのですが、会長にさせられてしまいました。それはともかく、とにかくいろんな事業部を積極的に経験したり、いろんなことにチャレンジしてくれる「広い」人が理想ですね。だから、ある程度上になるといろんな職を経験させることによって、将来に向けての管理職、特に部長・役員づくりをしています。

細川:今の多くの会社の取締役以上の人は、ローテーションを嫌がりますよね。

寺岡:本当に嫌がります。本人もそうですが、例えば慣れてきた部長を動かすとその部の仕事が落ちるんじゃないかということで嫌がることが多いですね。

細川:みんなそう言いますよね。できる人をみんな手放したくないんです。

寺岡:そうすると、できる人が同じところに滞留してしまう可能性があります。でも滞留してしまうと、企業は10〜20年でおそらく硬直化してしまいますよね。ですからあえて、強制的に社長権限で動かしています。

細川:強制的に動かす秘訣を教えていただけますか。

寺岡:「お前のために、あっちで勉強してこい」と言うだけです。部長までは社長権限と決まっていますので、その上司もトップ人事だから仕方がないと。

細川:エースを外されるのは嫌ですからね。

寺岡:本当に本部長クラスは嫌がりますよ。でも文句を言ってきたら「お前、クビだ」と言うだけですから。

細川:そのローテーションが、グループの活性化にかなり貢献しているんでしょうね。

寺岡:我々のように否が応にもやってきた人間なら仕方ありませんが、今は強制的にやらないと、経営者は育たないですからね。