細川:ナックさんで、社員が一番褒められるのはどんな時ですか?

寺岡:私たちが本当に嬉しいのは「○○さんは細かいことも対応してくれました。ありがとう」という手紙をもらうことです。私は必ずその手紙に返事を書きます。お叱りの手紙にも必ず返事は書きますね。そして直属の上司に「いい教育をしているね」、あるいは「何でお叱りをいただいたのか経過を報告しなさい」と言います。

細川:一貫していますね。

寺岡:お客様へのサービス、つまりお客様とのコミュニケーションがすべてですから、ここをいい加減にするわけにはいきません。嘘をつくなんてとんでもない話ですし、効果のない商品を効果があるというのは一切ダメです。そこの会話能力というか、お客様と接する能力がうちの社員は高いんだと思います。もちろんその能力を上げるためにいろんな訓練をしています。

JIMOSという化粧品がありますが、テレビやチラシを見て、お客様からかかってくる電話が勝負です。ここでミスをすると、そのお客様は一生お客様になってくれません。だから、コミュニケーション能力、対応能力を常に切磋琢磨して上げていっているわけです。これが他の会社よりもちょっと優れているところかもしれませんね。

細川:それはマニュアルになっているんでしょうか?

寺岡:もちろんマニュアルもありますし、あとは一人ひとりの言い方や接し方がありますから、本人が変えていくわけですが、それを我々がまた教育していくわけです。

細川:一人ひとりの暗黙知を共有化していくのでしょうか?

寺岡:そうですね。共有化して、それを上げていくということですね。そこが他の会社に比べて高いのだと思います。

チーム制と公正な人事が離職率を下げるキー

細川:いろんなサービスをされていますが、そのイノベーションのきっかけはあくまでも「お客様のお困りごと」という視点なんでしょうか。

寺岡:そうですね。これをやったら、喜んでもらえるんじゃないかとか、これをやったらお客様に感謝をされるんじゃないか、とかですね。

細川:そうは言っても、へこたれる若者もいますよね。

寺岡:いますよ。お客様から感謝もされますが、クレームもいただきます。そうするとへこたれるわけですが、確かに若い人は多いですよね。昔のように「そんなことで何をへこたれてるんだ」と言ったらパワハラになりますから、若い人がくじけそうな時に、ちょっと相談できる人がそばにいると一番いいということで、我々は新卒を2人1組にして、そこにもう1人先輩社員をつけて3人で仕事を1〜2年やることにしているんです。チームでやることで、へこたれても、同級生が頑張れよと励まし、先輩が「自分も経験したんだ」と話すことによって、乗り越えていけます。これをするようになって、離職率は減りました。

細川:ある経営者も、責任のある立場の人1人と、社歴の浅い2人の3人で組むとチーム力が高まると言っていました。

寺岡:3人が同じ立場では傷をなめ合うだけですが、少し経験している1〜2年上の人をつけると相談しやすくなります。これが5〜10年離れてしまうと相談しにくくなるんですね。

細川:ナックは個人プレイヤーが評価される仕組みではないんでしょうか。

寺岡:基本的には個人ですが、最初の2〜3年はチームで動くということですね。そこからは1人で動きます。我々の場合、ゼネコンのように課や会社を挙げてトンネル工事を取りにいくとか、大きなビルの工事を取りにいくというようなことはありません。一人ひとりがお客様のところへ行って、お客様に納得してもらって、その商品を継続してとってもらう、それが我々の一番大事なところです。だから、はっきり自分の結果と他人の結果が出るわけです。我々はその上がった結果をきちんと評価する、公平というよりも公正な人事をモットーにしてきました。だから、やった人だけ、例えばAとBの間に差があれば、その分だけBの方がよくやったと様々な評価をされる場をつくるわけです。

細川:評価はどのようにフィードバックされているんでしょうか。

寺岡:お金と立場と2つありますね。でも若いうちは20歳の人に高い役職をつけても、世間的にはどうかということもありますので、立場にはそんなにフィードバックしていません。ある程度お金で評価して、上にいけばいくほど、今度は立場で評価をしています。その境目はだいたい35〜40歳くらいですね。

細川:お客様の信頼は数値化するのが難しいと思うのですが、どうやって測っているのでしょうか。

寺岡:営業成績は、ほとんどそのままお客様からの信頼の結果の表れなんです。たとえば、研修で「自動車を買いにいった時に、たまたま事務所をのぞいたら、営業マン5人の名前があって、それぞれ、1台・3台・5台・7台・20台の販売実績があったとしたら、誰から車を買うか?」と質問すると、全員「20台の実績の人」と答えるんです。「20台の人は忙しいけど、1台の人は張りついてやってくれるかもしれないよ」と言っても、やはり20台の実績の人なんです。それはそうですよね。

売れる人には、必ず売れる根拠があって、だからお客様がつくんです。だから、たくさん売る人は、それだけいい仕事をしているんです。いい仕事をしなければ、お客様はつきません。ですから、信頼は数字の評価に表れると思っています。ただ、急に表れるのはおかしいんですよね。これは少し疑った方がいいですね。