業種、業界の領域を超えて集うコミュニティと2層のロールモデル

細川:日本女子経営大学院はスタートして、実際にどうですか? 

河北:はい、3カ月経ちました。あっという間ですね。働きながら学ぶ女性のためのビジネススクール、日本女子経営大学院第1期生は、企業派遣25名、個人申込み25名で全50名です。20代~50代まで、そしてリーダー候補から部長レベルまでの幅があります。独身も既婚も母親もそれぞれで、多様な業種、業界の、企業人や起業家の意欲ある女性たちが集まり、イキイキと学んでいます。受講生は、関東近郊だけでなく、大阪、名古屋、広島、福島、新潟など遠方からの方もいらっしゃいますよ。

 彼女たちは皆、誰に遠慮することもなく自分の可能性を開発するために、肩の力を抜いて、自分のために集中し学んでいます。専門分野の第一線で活躍する講師陣の授業は刺激的であり、更にチームのディスカッションにて深堀りしたり視野を広げたり、またオンラインコミュニティで授業と日常活動のOJTを補完します。

 最近は、授業でもう一つ曖昧な理解であったことが、別の教科の中での学びと繋がり、「あ、そういうことなんだ」と分かったり、職場で後輩に教えたり、実践し行動し内省してみて、改めて概念が理解出来たりという時期のようです。また「職場の上司の言葉の意味が分かり、繋がりました。この会社にいて良かった」なとどいう話す方もいました。超多忙な受講生ですが悩みながらつまずきながら確実に力をつけています。

 そもそもワークライフバランスに悩む受講生でもありますが、日常の仕事と家庭を何とかマネジメントしつつも新しい世界が広がり、充実しているようですね。

 また、受講生が自主的な活動として講義前に朝ヨガや勉強会なども始まりました。受講生同士は、異なる業種、業界の領域を超えて集うコミュニティですが、同じ悩みを持つ仲間でもあり、仲間の成功事例に学べたり、同じ授業を受けても全く異なる視点を発見したり、世の中に対する自分の思い込みに気づいたりします。ここで出会った仲間はかけがえのない友人になると話していました。

 また、この大学院の大きな特徴でもある、メンターサポートという制度があります。女性エグゼクティブリーダー(企業、起業家)=先駆者ロールモデルと、ビジネスの第1線で活躍し現場経験の豊富な女性ミドルリーダー(企業、起業家)=一歩先ゆく先輩ロールモデルの2層のロールモデルが存在します。一定期間メンターとの個別メンタリングも電話会議システムを活用し継続実施しています。 具体的な目標の再設定や多様な悩みがちょうど出てくる頃ですので、効果的に機能していく訳ですね。トピックスとしては、アメリカ大使館から新聞の掲載記事をご覧になったようで、お電話を頂きまして学校視察にいらっしゃいました。

 日本よりも女性の活躍が進んでいると言われるアメリカも、本当のエリートリーダーはあまり多くはありません。本当のエリートリーダーは男性のように働き、家庭の時間を持てず、家事や育児をアウトソーシングしています。時にはアウトソーシングもいいかもしれませんが、家庭力も仕事力ももう少し工夫ができる箇所があるのではないかと思っています。「生産性(効率)」と「幸せ」のバランスがとれる領域が必ずあるはずです。そもそも仕事とは、自分の才能を使い、組織に(社会に)価値を提供すること。誰かを笑顔にすることによる喜びと生産性の双方を可能にするものです。そしてその価値の提供こそが社会への貢献に繋がっているものですから。

 女性活躍という単位で語るのであれば、働きやすい環境整備に加え、リーダー教育の必要性は不可欠であり、また取り組むことにより大きな変化が見込める焦点であるかと思います。

細川:河北さんも超多忙な方ですが、ワークライフバランスは取れていますか?

河北:確かに忙しく、ワークにやや偏り気味ではあり、反省しきりです。しかし私はそのために気を付けていること、大事にしていることがあります。それは、子供の教育の為、夫婦や家庭のマネジメントの為、自分のワークライフバランスのためにも、日本の文化を家庭に入れ込むこと、なるべくですが…四季の中の年間行事を家庭で実行しようと思っています。

 私の家は年間行事をとても大事にする家でした。それは、家族が集まる理由となり、コミュニケーションや会話を増やし、日本に対する理解が自然にでき、人を幸せにする力を持っています。ひな祭り、お花見、お月見・・・楽しいですよね。食にも興味あるので、私は年に1回、なるべく家族を巻き込み、梅仕事をしたり、常備菜を作ったりします。梅仕事とは、梅干し、ジュース、ジャム、お酒などの、手作りする仕事のことで、それを一年かけて食すというものです。家族で手をかけて作って美味しいと感じる、そういう自然の全体性を感じることは非常に大事ですよね。そのコミュニケーションこそが日本の文化や四季を知る機会となり、自然に触れ畏敬の念を感じるきっかけでもあり、人との大切なふれあいそのものです。調和を理解する上でも、日本の文化はとても有効なのです。

 今の日本では、働いているお母さんは無理するもの、という図が多いように見えますが、これからは夫婦も、男女の違いを尊重しつつ、共に尊び、共に働き、共に育て、共に学ぶ、そして共に楽しむことだと思っています。効率を学び生産性を上げ、長時間労働をなくし、家庭での円満な家族とのコミュニケーションにより、経済活動(購買行動など)へも循環します。またその有意義な時間が、創造性を磨きイノベーションを創出することにも繋がるのではないかと思います。

細川:日本人は日本の文化をもっと世界中に輸出すべきだと思います。

河北:そう、そうなんですよ。その通りです!でも日本人こそが味わっていない、知らないかもしれないのです。そして、それを知ることがグローバル時代には必要なのではないかとも思うのです。

細川:日本人は調和、バランスを考えることができる国民性を持っていますよね。そういう素晴らしさもありますが、女性だから男性だからということではなく、肝心なのはリーダーとして有能かどうかだと思うのです。ただ、女性は仕事以外でも非常に忙しいので、その部分の環境整備が必要ですね。

河北:働きやすい環境整備とリーダーとしての教育の必要性の両方ありますね。

細川:成果の上げられる女性は、長時間、会社にいる必要はないと思います。我が社も小さい会社ですが、在宅勤務も取り入れて柔軟に対応しています。拘束する時間を少なくしてあげれば、女性はもっと活躍できるのではないかと思いますね。

河北:本当にそう思います。私どもの事務局にもパートタイムの人もいますが、本当によく仕事をしてくれます。柔軟な働き方ができる、長時間労働を社会全体で減らしていくための環境整備が必要ですね、努力が要りますが、ある意味決断でもありますね。

 男性も女性もワークライフバランスを望んでいて、幸福になりたいのに幸福度が低いのが現状です。先ほどお話ししましたように家庭のコミュニケーションがよくなれば、物が売れて経済にも反映されます。そこがうまく循環していくようにしなければならないですよね。

 制度は大事ですがそれだけでは解決しないのです。風土やコミュニケーションはとても大事です。女性が時短で自分だけ帰り、周囲に申し訳ないと思っているのは絶対よくない。組織内も社会全体も邪魔者ではなく、理解してくれている、助けてくれていると感じる安心感が大切なのではないかと思います。仕事も育児もキャリアアップも当たり前の世の中は必ず創ることができると思っています。

 そういった意味でも、知を学ぶことは意味があると思います。旧態依然としたシステムがすべてではない事を、自分で道を切り開くこともまた、先人が示してもくれます。過小評価し、自分のことはつい後回しにしてしまうのではなく、自分のために学ぶ時間も必要です。サードプレイスと言いますが、「仕事の場所」「家庭の場所」だけでなく、第三の「学びの場所」があると、人生のバランスはとても良くなると思います。

 私は人が成熟して幸せになっていくためには、学びが大事だとずっと思っています。女性は、学ぶことが大好きであり、自分の為に自由に学ぶ時代になりました。そのことが、家族のために、会社のために、世界の誰かのために役に立つことに繋がります。自分の可能性を勝手に限定せずにもっと大切にしてほしいと思います。学ぶことは、社会を未来を創ることそのものです。学びたい意欲がある女性は「誰でも学べる場所」をずっと欲していたと思いますね。

細川:女性が活躍する、まさにイノベーションの場ですね。

細川 馨(ほそかわ・かおる) ビジネスコーチ(株) 代表取締役
細川 馨

 ビジネスコーチ(株)代表取締役。外資系生命保険会社に入社し、支社長、支社開発室長などを経て、2003年にプロコーチとして独立。2005年にビジネスコーチを設立。ビジネスリーダー育成のスクールを主宰。著書に『「右腕」を育てる実践コーチング』(日本経済新聞出版社)『生保最強営業マンの実践コーチング塾』(日経BP社)など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。