いくつもの壁を乗り越えて日本女子経営大学院を設立

細川:そして、2014年の9月に日本女子経営大学院を設立され、代表理事に就任されましたね。この大学院を設立しようと思ったきっかけはなんですか。

河北: 現代、女性リーダーが育ちにくい環境の社会の中で、女性の持つ潜在力や可能性を開花させ、しなやかな女性リーダーを日本に養成・輩出することが、今と未来を創る社会のイノベーションの梃子になると思っています。そして今がそのタイミングだとビビッと感じたからです。時代の潮目でしょうか。

 企業は、これまでの延長線のやり方では行き詰まり感を感じ、ダイバーシティこそ、イノベーションには必要であることを総論理解しています。人もまた、多様な人材がイキイキと働くこと、男女かかわらず自分を使って意欲をもって仕事をすること、そもそも人として、生き方、働き方、真の幸福とは何かを問う時代となりました。

 そして、グローバルから見ても大きく遅れをとる日本において、政府による女性活躍推進の流れがしかるべくうねりとなってきたことは言うまでもありません。男女雇用機会均等法が施行されて約30年ですが、無意識無関心が当たり前のジェンダーギャップが少しずつ顕在化されてきました。

 ダイバーシティの一番身近にある女性活躍ですが、女性活躍は女性の問題でなく社会全体の問題であり、女性も男性もその当事者であることの理解が広がり始めました。よく観察したら中身が変化したのに、気が付けば古い雛形に縛られていること、そのぎくしゃく感に気が付き共有認識が始まりつつあります。

 世界が、政府が、企業が、そして女性側も、男性側も、人としての生き方を含め、やっと日本も準備が出来てきたのだと思います。ですから3カ月、6カ月先ではなく、スタートするのは今だと決めました。

細川:相当タフな仕事だったと思います。ミッションがあり、流れがあっても実行するのは大変ですよね。実行にあたって一番の壁は何だったのでしょうか。

河北:いくつかの壁があったのですが、最大の壁は私自身でした。この大学院が、社会がよくなるための梃子になると早々に確信していたのですが、答えはだれも教えてくれるわけでもないですし、本当に大丈夫なんだろうかと迷ったことがありました。

 そんな時、外資系企業や大手企業のトップレベルの方々にプレゼンさせてもらう機会をいただいたのです。私は今の案に対する意見をいただいて、よりよい案にする材料にさせていただきたいというスタンスで臨んだのですが、参加された方々はすでに完成されているものだと思っておられたので、それこそ徹底的に厳しいフィードバックをいただきました。そりゃそうですね。よし聞いてやろうと前のめりになって思ってくださったのに、私は、ご意見いただけますかのような姿勢であり、また本質まで深掘りできていない詰めの甘い内容だったのです。

 しかし皆さんは無視することなく、真正面から率直なフィードバックをくださったのです。皆様からの厳しいフィードバックでズタズタになりながらも不思議に静かな気持ちでした。必死ではありましたが、新鮮であり、純粋に嬉しく思いました。何より、目が覚めた気がしました。真剣さ、厳しさ、そして温かさを感じました。本当に素晴らしい機会でしたよ。これをきっかけに、私自身は、新しいプロジェクトという感覚から、この学校を設立するという責任と事業を切り開くという、覚悟を決めることができました。

 皆さんから言われたのは、いったいあなたはどうしたいのか?という事でした。あまり日和見的に考えるなということでもありました。マーケットはどうするか、リスクは何か、ターゲットはどうするか?その根拠は何か?どうやったら成功するかではなく、自分がどうしたいのか?あなたがそう思うことをもっともっと考え、突き詰めて深め、本質までたどり着くこと。そうしたら人の顔色など気にせず思ったようにやることが一番大事だと言われました。とても心に染みました。それまでは成功する戦略とタイミングには自信がありましたが、大きなことを動かすことになる自分はそんな器なのかと自信も足りなくて、また責任も重く、もやもやするものがありました。しかしその日を境にスッキリして、腹をくくることができ、本当に自分の思うように行動することを決めました。

 例えばですが、この大学院は組織人も起業家も入学できます。どちらかに絞るのでなく異なる2つがインクルージョンする、活かし合います。組織人、起業家の求めるものと傾向は違います。しかし要望やレベルを2つに分類し効率良く知識をいれるのではない教育が必要です。二者択一ではなく、異なるもの多様なものを使い合い最高のモノを導き出す、調和やイノベーションが世の中には必要なんだと思うのです。仕事と生活のバランスもリーダーシップも繋ぎ、統合することをプログラムしています。個人と組織と社会もそもそも繋がっている訳です。好きにやっていいんだと思ってからは、自信をもって格段にスピードが上がりました。

細川:私は転職経験がゼロなんです。会社の吸収合併を機に、なぜ吸収されたのか自問自答したときに、組織力が弱かったんじゃないかと思ったんです。組織の中では正しいと思っていても、世の中には優れたものがたくさんあるので、そういうものを活用しながら、良い組織を創っていくべきだったんじゃないかと。吸収合併されてもお客様は守られますが、従業員は路頭に迷うこともあるわけです。それが起業のきっかけで、その思いは今も変わっていません。

 だから重要なのは「思い」だと思うんです。私も起業するときに、いろんな人がいろんなことを言いました。でもはっきり言って聞いてないですよね。

河北:私は一時、聞き過ぎてしまった時期がありました。でもやっぱり、事故を経験したからではないのですが、人はみんな等しく終わりがある、つまり死んでしまうんです。頂いた命を使って、自分がどうしたいかです。やりたいことをやらないで言い訳と共に生きるのは、モッタイナイと思います。せっかく生きているのですから。

細川:自分のミッションがぶれなければ、それでいいですよね。周囲のアドバイスやフィードバックを聞くことも必要ではありますが、重要なのはまず自分ですね。

河北:世の中にはスゴイ人がたくさんいます。自分のダメさ加減もよくわかります。私は偉くないし、ブランドはありません。 経営者としても人としても正しいか、その器が自分にあるかなど、わかりません。夢を実現するために上手くいくための道具として、恥をかきつつ進めております。有難いことに、本当に素晴らしい皆さまに、沢山助けてもらっているんです。

細川:アンドリュー・カーネギーの「人間は、優れた仕事をするためには、自分一人でやるよりも、他人の助けを借りるほうが良いものだと悟ったとき、その人は偉大なる成長を遂げるのである」という言葉は最高です。そう思った時に、素晴らしい人が集まってくるんですよね。