自己実現の場を提供するのが経営者の役割

細川:今の業績になったのは、仕組みを作りあげたことがすべてだとお考えですか。

葉田:仕組みだけではなく、社員が経営参画意識を持っていることだと思います。経営者は自己実現の場を提供しているにすぎないと思っています。人間はやりたいことしかやらないという信念を持っていますので、自己実現の場を与えて、自覚を持って若い人が喜々として、責任感を持ってやっているというのが、ようやくここ2〜3年です。成長してきたという感じですね。

細川:今の若い人は、与えられた仕事をする方が、失敗がなくていいという傾向が強いようですが、社長のところは違いますか。

葉田:基本的には、会社説明会では自らが話しています。採用活動に力を入れている社長はたくさんおられると思うのですが、私は最初から最後まで自分で話します。そして競争が厳しいことを伝えて、納得してから入社してもらっています。採用は一番努力しているので、特に一部上場してから、良い社員が入ってくれるようになりましたね。もちろん一から再教育することもありますが、自己認識ができるようにしてあげれば、きちんとやるようになります。ただ、こちらもそのつもりで教育しなければなりません。エジプト文明の時代から「今の若いやつは」と言っていたらしいですから、その時代に応じて会社理念とか、会社の中身に納得してもらって、教育をして、仲間意識を持ってやっていくことがまず大事です。新聞を読んで評論家みたいに言うことは誰でもできるんです。やはり自分の会社に合った人を採用する必要がありますね。毎年ボストンにも行って、留学生を採用しているのですが、あまりに中国人留学生が採用できないので、この間は直接中国に面接をしに行きました。昨年11月には、とても良い人が採用できましたよ。

細川:社長から見て、いいなと思う社員が持っている資質はどんなものですか。

葉田:最近、自ら考えて自らいろいろな成果を上げてくる社員が、企画開発から出てくるようになりましたね。

細川:それは面白いですね。自分で考えるのが一番いいですからね。

葉田:そうですね。ただ、大きなトレンドの流れは彼らから上がってくる報告をもとに、私が判断するようにしています。

細川:それは直感ですか。

葉田:動いていれば見えてきます。昔は自分で動いていましたが、今は部下のレポートもきっちり読んで、判断しています。 私は経営学オタクで、この20年ほど、経営者の講演をずっと聞いているんです。経営者のCDはもう1,000枚以上買っています。愛読書は「ハーバード・ビジネス・レビュー」と「選択」と「FACTA」です。

葉田:30年やってきましたが、本当のことを言うと、30年間のことはほとんど覚えていません。脳みそが昨日のことは、すぐに忘れるようにできているんです。振り返らずに、どう将来にどんな手を打っていくのか、そんなことしか考えていないですね。それから、成功者と言われても自分が成功者だとは全く思っていなくて、まだまだやらなきゃ、全然できていないと思っています。役員たちもみんなそう思っていると思います。