企業にとって「働き方改革」は喫緊の課題だ。しかし、一歩間違えば、成長を阻害しかねず、多くの企業が具体的なアクションについて頭を悩ませている。そんな現状を反映するかのように、2017年11月8日にベルサール東京日本橋で開催された「働き方改革セミナー」は大盛況。急きょ、補助イスを用意するほどだった。

大盛況だった働き方改革セミナー
大盛況だった働き方改革セミナー

今こそ日本企業は人的投資を積極化すべきだ

 働き方改革セミナーは、慶應義塾大学の樋口美雄教授による基調講演「働き方改革と生産性向上で持続的成長を」で幕を開けた。

 内閣府の働き方改革実現会議の有識者に名を連ねる樋口教授は「日本は世界でも長時間労働なのに生産性が低く、競争力も低いのが現状」と指摘する。戦後の日本企業は雇用の維持・拡大、労使の協力と協議、成果の公正配分からなる生産性三原則をテコに驚異的な成長を遂げてきた。しかし、バブル崩壊を経て流れが大きく変わる。

 「かつてはリストラするような企業は見込みがないとして、株価が下がったものですが、1997年頃からリストラで株価が上がるようになりました。いわゆる『物言う株主』の増加も影響し、人件費は削減される一方。景気が回復して利益を上げるようになっても労働者への還元はなく、日本では極端に労働分配率が下がっています」(樋口教授)。

 グローバル化で企業環境は厳しさを増している。利益を上げるために人件費を抑制する、人が足りないから1人当たりの仕事量が増えて残業時間も増える、オーバーワークで生産性が低下し、競争力が下がる……そんな負のスパイラルに陥っている。

 樋口教授はこれから企業が取り組むべきことの一例として人的投資を挙げた。

 「日本企業はパソコンなどの有形資産には投資をしていますが、人的投資や組織改革への投資比率が低い。無形資産は投資ではなく、コストとみなして削減し続けてきた結果が今の日本ですから、ここを改善すべきです。ハードはツールに過ぎません。生産性を上げるのは人なのです」(樋口教授)。

慶應義塾大学 樋口 美雄教授の基調講演
慶應義塾大学 樋口 美雄教授の基調講演