所定時間内で仕事を終えるという原則を徹底する

――佐藤先生の本には、日本の仕事のやり方について「過剰品質」という言葉が出てきます。

佐藤:働き方改革を進めると、育児や介護などを抱えていて働き方を変える必要があると思っている人がいる一方で、今のやり方のままでいいと思っている人もいます。「なぜ会社のためにいい仕事をしたいのに自分たちの仕事を邪魔するんだ」と。問題は「いい仕事」の中身なんです。

 自分がやったことに見合った対価が、最終段階で価格としてとれているのか。そこが満たされていなければ過剰品質であり、自己満足でしかないのです。

――例えば、上司の指示があいまいであるがゆえに、A4用紙1枚で済む企画書がパワーポイント30枚になってしまったというのもまさに過剰品質に陥ってワークライフバランスを崩しているということですね。

佐藤:今の管理職が一般社員だった時は、上司も自分もお互いそれでよかったんですね。極端なことを言えばみんな仕事が大好きで、サービス残業などでも会社がたたかれることもなかった。そういう人が今管理職になっているわけですが、部下は以前の自分とは異なるわけです。以前はいくらでも使えると思っていた部下の時間には限りがあり、その中で最大のアウトプットを出してもらえる仕事の仕方を管理職は考えなくてはいけませんのです。

 また、日本の企業では往々にして、キャリアの浅い人に「お前はまだ仕事ができないんだから、時間で貢献しろ」と管理職が言ったりします。本当は、新入社員には半年から1年の間は残業をさせないようにすべきです。もちろん遊ばせてはダメだし、仕事も覚えさせなくてはいけないですが、所定時間内で仕事が終わるように段取りを組み、残業をするようになったら、つまり計画が狂った理由を「なぜ」と考えることをさせるわけです。

 所定時間内で仕事をするという原則を、日本の企業は社員に教えてこなかった。そこから変えないといけないと思います。

同じ時間でより付加価値の高い仕事をすることが重要

――働き方改革を実行すると、企業は本当に強くなるのでしょうか。

佐藤:大事なのは、同じ時間でより付加価値の高い仕事の仕方に変えることです。そのためには、生産性が上がったことを評価するしくみが必要です。

 例として、人材派遣会社の営業担当者を考えてみます。所定労働時間で100人の派遣スタッフを管理できるとすると、売り上げの伸ばし方は2通りあります。1つは、同じ派遣料金の派遣先を開拓し120人のスタッフの面倒を見る。もう1つは、同じ人数のまま、更新の際に一般事務より派遣料金の高い経理での派遣の仕事を取ってくる方法です。これは、より付加価値の高い派遣領域をメインとする派遣会社に変わっていくことでもあります。働き方開花には、会社としてどのような企業を目指すかというビジネスの選択が大事になります。

 社員の働き方の評価基準を変えないと働き方改革は進みません。時間をかける方が実は楽ですが、介護や育児などで6時間勤務の人はそういう働き方にしようがないですから、時間の長さでなく、時間当たりの成果を評価しないといけないのです。