日経BP社では、少子高齢化による人手不足や長時間労働是正、生産性向上といった課題が山積する中、企業の成長につながる真のダイバーシティ推進と働き方改革を考えるセミナー「ダイバーシティと経営革新」を開催。政府担当者、先進企業の経営層、学識者が登壇した講演の中から、中央大学大学院教授の佐藤博樹氏を迎えたトークセッション「『女性活躍』と『働き方改革』企業の成長に結びつけるには」の内容をお届けする。
聞き手は日経BP社執行役員 麓幸子。
(文=谷口絵美、撮影=竹井俊晴)

残業依存体質を改め多様な人が活躍できる組織に

――ダイバーシティ経営とは深い関係のある働き方改革。多くの企業が今喫緊の課題として取り組んでいますが、まず、「働き方改革」について先生のご意見をお伺いさせてください。

佐藤教授(以下、佐藤):働き方改革については、捉え方が狭くなっているように感じます。もちろん、健康を害するような過度な長時間労働や、36協定を結んでいないといったことは即刻解消しなくてはいけないものです。でも、それだけが働き方改革ではありません。

 残業がない職場であっても、広義の働き方改革は必要だと思っています。他方では、やらなきゃいけない残業もあるということも十分に理解されていません。

 分かりやすい例を挙げると、自動車メーカーに部品を納めている下請け企業で、明日までに取引先に量産試作のための部品500個を納品しなくてはいけないとします。それが午後になって不良品が2個に1個の割合で発生してしまった。取引先に事情を説明して納期を延ばしてもらえないか相談したところ、「どうしても明日納めてもらわないと量産段階のスケジュールが狂ってしまう。必要ならうちから応援も出す」と言われた。そこで、夕方に残れる人に残業をお願いし、不良品を良品化したとします。これはやらなきゃいけない残業だと思います。

中央大学大学院教授 佐藤博樹氏
中央大学大学院教授 佐藤博樹氏

 問題はこの後です。日本のものづくりの現場では、不良品が発生した原因を追究し、同じ理由で不良品ができないようにします。つまり、同じ原因で残業しなくていいようにしているわけです。ところが、営業や研究開発、管理部門などでは「現場と同じようにはいかない」と言うのですね。でも本当にそうなのか、取り組んでみないと分からないのです。そうした取り組むが弱い背景には、「仕事が終わらなければ残業すればいい」という考えがあるのです。大切なのは、安易な残業依存体質をなくすことです。仕事の仕方、時間の使い方を変化し、さらには多様な人材が活躍できるようにするのが真の働き方改革なのです。

――「お客様第一主義」ゆえの長時間労働ですが、顧客対応はどうしたらいいでしょうか。

佐藤:「明日の朝までに対応してほしい」と言われた時に、できませんと言うのではなく、「もう1日いただければもっとバージョンアップしたものを提案できますが、どうでしょうか?」というように聞いてみることです。このコミュニケーションが大事です。これは対上司も同じで、「これを今日中にやってよ」と言われた時に、本当に急いでいるのかを確認すべきです。