このままでは優秀な人材を獲得できない「雇い負け」状態に

 現状を3つの観点からもう少し細かく見ていきます。

 新卒一括採用から始まる終身雇用の日本型雇用システムは、かつてのビジネスモデルとも親和性の高いものでした。しかしまさに今、働き方改革をめぐる課題として挙げられているように、人口減少、長時間労働、人手不足の深刻化、業務の非効率性、雇用の流動性の必要性など、さまざまな課題が見えてきています。

 中長期的な価値の向上という観点から、ESG投資への関心も高まっています。従来のように財務諸表だけではなく、非財務情報である「E=環境、S=社会、G=ガバナンス」に力を入れている企業を評価していこうというもので、海外の投資家を中心に大きな流れとなりつつあります。多くのアセットを持っている投資家が、企業の短期的な成長や業績だけではなく、中長期的な発展性に目を向けています。企業がガバナンス改革やダイバーシティ経営に取り組み、情報を開示していくことは資本市場へのアピールにもつながります。

 また、マクロ予測によると、日本の人口は2065年には約8800万人まで減り、生産年齢人口も現状の約7600万人から約4500万人になるといわれています。一方で人材獲得競争の実態を見ると、外国人からの日系企業の人気は芳しくありません。海外の優秀な方々からすると、日本企業には長時間労働のイメージがあり、人事制度や評価制度もあいまいで、敬遠される傾向があります。結果として、今後人材不足に苦しむ企業が外国人を採用しようとしても、思ったように優秀な人材が獲得できない「雇い負け」に陥る可能性が高いのです。

「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を発表

 ここ数年で企業の皆様にダイバーシティ経営を進めなければいけないという問題意識が高まっています。2016年4月には女性活躍推進法が施行され、労働者301人以上の企業に対して、女性活躍に関する数値目標を含めた自主行動計画の策定・公表が義務づけられています。しかしその一方で、女性活躍そのものが自己目的化しているという声も聞かれます。法律の要請もあって受け身的に形だけ整えてみたものの、思ったような成果に結びつかない。このままでは企業にプラスになるどころか、ただの手間とコストになってしまうのではないかと危惧しました。

 こうしたことから、経済産業省は昨年8月に「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」を立ち上げ、ダイバーシティを真に経営にとってプラスになるものに変えるためには何が必要なのかを改めて考えてみることにしました。その内容をまとめたものを、「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」と名付けて今年3月に発表しました。