インタビュアー 松丘啓司(エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役)

 ギャップジャパンは2013年に従業員のレーティングを廃止して、上司と部下が頻繁に対話を行うGPS(Grow、Perform、Succeed)という名称の新しいパフォーマンスマネジメント制度を導入した。それは単なる評価制度の見直しではない。これからの働き方と組織風土づくりに向けた企業変革なのである。ギャップジャパンで本取り組みを最初から推進してこられた人事部シニアマネージャーの佐藤陽子さん(以下、敬称略)に、変革の狙いと目指す姿について伺った。

プロセスをシンプルにしてパフォーマンス向上につながる仕組みへ

松丘:御社には以前から人材開発に関する独自の考え方やカルチャーがあったと聞いていますが、それらとGPSの関連について教えていただけますか?

佐藤:米国本社であるGap Inc.には、管理職全員が人の育成に関して責任を持たなければならないという考え方がもともとあり、ギャップジャパンでもそれが浸透していました。そのため、マネジャーとして高い評価を得るためには、業務で素晴らしい成果を出すのと同様に、人材の育成に力を入れなければなりません。また、以前の目標管理を行っていた時代から、年度末に部下の評価を行う際には上司だけが判断するのではなく、一緒に仕事をしてきた人々から部下のフィードバックをもらって、それを育成のために使うことを意識的に行ってきたという背景があります。フィードバックカルチャーと呼んで、フィードバックは良いことだという価値観が共有されてきました。

松丘:マネジャーに対する人材開発もかなり行われてきたのですよね。

佐藤:フィードバックやコーチングの仕方などのトレーニングをずっと行ってきました。その一方で限界も感じていて、日常の生活に深く落とし込むレベルまではなかなか到達しませんでした。けれどもGPSになってからは、最低でも月に1回は部下と対話をする機会(マンスリータッチベース)を持って、そこでパフォーマンスに関するフィードバックをタイムリーに行っています。また、キャリアの話や仕事への取り組み方なども話し合うことによって、対話の内容が深まってきました。

松丘:GPSを導入することになったきっかけは何かあるのでしょうか?

佐藤:3年以上前に2つのきっかけがありました。1つ目は、アメリカ西海岸の企業を中心に、脳科学の研究会で人のモチベーションやパフォーマンスをどうやって上げるかが話し合われていたことです。そこからの発見を、社内のパフォーマンスマネジメント(PM)担当者が経営者に話し、Gap Inc.に新しいPMの仕組みを導入するならどういうデザインがよいのかを考案しはじめました。

2つ目は、マネジメントや従業員からの声です。それまで、年の終わりにものすごく時間をかけてPMをやっていましたが、それに費やす時間の多さに対してパフォーマンスを高めたいと、各人が思えるような十分な効果につながっていませんでした。マネジメントの方にしてみれば、PMに時間を取られて自分の仕事時間が減る。従業員の方からすると、年初の目標に対してどれだけできたかを正当化するためのプレゼンテーションを作ることにものすごくストレスを感じていたのです。誰も得をしていないことを続けるのではなく、もっとプロセスをシンプルにして、本当の意味でパフォーマンスの向上につながるような仕組みに変えられないかという声が上がってきました。