植田寿乃
キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント

「自分は聞き上手だと思っていたが、部下の心を傷つけまくっていたことに気付けた。自分勝手なことが判明した。こころに寄り添うことのむずかしさを感じたが、少しでも部下の心情を理解するように心がけたい」

「全く自己中心的な考え方で固まっていることに気づきました。独善的で押しつけが強すぎることにも気づきました。『心』を開く、相手の心の声を聴く、『心』に寄り添う。本当に心が大事であり、まず自分自身の心を開くように努力します」

「部下からの相談に対して、自分の考えを押し付けて解決したつもりでいるのではないかと大いに反省した」

「忙しさの中で、人としての本質を見ることを見失っていた気がする」

 これは、某地方銀行の支店長を対象にした「モチベーション・リーダーシップ2日間~人間力を磨く研修~」の宿泊研修での参加者の受講後アンケートコメントの抜粋です。参加者は27名(うち女性1名)、44歳~52歳、平均年齢47歳。銀行の支店長といえば、まさに一国一城の主的な存在で、大きな影響力があります。そういう立場に立つ人たちですから、自分自身の過去の経験に基づく仕事観や価値観が確立していて、自分に自信を持っている方がほとんどでした。

 しかし、2日間の研修を終えた時の27名の表情は、まるで小学生のようにピュアな笑顔で、生まれ変わったような初々しいエネルギーに満ちていました。今まで眠っていた心の温かさが目覚め、愛が溢れ、彼らを包み輝かせていました。まさに彼ら自身の人間力が全開状態になったという感じです。

男性経営陣や管理職の意識が本当に変わるためには、宿泊で2日間が絶対に必要!

 こちらの銀行は、女性活躍推進にいち早く取り組んできています。私も2009年から、毎年「女性リーダー・エンカレッジ研修2日間」で管理職&管理職候補の女性たちを動機づけ、応援する研修を講師として担当してきました。そして、私の研修を受講した女性たちのほとんどが、支店長にも受けて欲しいという感想をアンケートに書いていました。

 7年目にして今年、まさにそれが実現しました。銀行の支店長といえば、一般の会社でいうところの部長クラスくらいかもしれません。彼らを対象にした研修やセミナーとしては、たとえば「支店長会議」といった半日、1日といったスケジュールの中に組み込まれて行われていました。2日間、しかも泊りがけという研修は初めての試みでした。

 私は、ここ数年、半日で女性活躍推進、ダイバーシティ推進の重要性を男性管理職に理解させ、意識を変えて欲しいという半日講演を非常にたくさん頼まれてきました。半日であれば管理職を集めやすいし、講演形式ならたくさん受講できます。しかし、その講演を受講した男性管理職は、その後どのくらい変化があるのかといえば、微妙です。確かに講演を聴いている最中の共有時間では9割がたの方々は、「たくさんドキッとした!」「心に響いた!」「俺は変わらなきゃいけない、変わるぞ!」といった言葉が飛び交います。しかし、残念ながら、会場から職場に戻った瞬間から、心に響いたことが薄れ、今までの忙しい日常に埋没して頭だけを動かし、気づきが消えていってしまうという方々が半分以上です。

 ただし、3割くらいの方々は意識、態度、行動に大きな変化が見られるようなので、まったく無駄というわけではありません。変化する3割の方々は、もともと自分が変わるべき時だということを薄々感じていていた方が多く、実は、女性活躍推進、ダイバーシティ推進において自分の部下に対するかかわり方、リーダーシップにいろいろ悩んでいる意識の高い方々です。

 だからこそ、問題は残りの7割の変わらない人たちです。長く昭和の時代に働き、企業戦士として滅私奉公が当たり前、リーダーは軍隊の隊長なのだと信じてやってきた管理職たちは、自分を変えることに否定的です。つまり「昭和な俺流」ができてしまっている男性管理職が、今のダイバーシティ時代の部下を育て活かすリーダー「人間力リーダー」に変心&変身できるかどうかです。女性活躍推進、ダイバーシティ推進を行う上で、実は管理職の人間力こそが、最大のハードルとなって立ちはだかっていることに、どれだけの企業が気づいているでしょうか?