植田寿乃
キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント

 「男性がイクメンになるなんて信じられない。男は何が何でも最優先するは仕事。イクメン部下は信用できないので、責任ある仕事は任せない」

 こんな発言をする45歳以上の男性管理職が、私の研修や講演でたまにいます。男性がワークライフバランスを大切にしてイクメンで働くことは、やはり企業戦士な男子管理職上司からはサラリーマン失格として見なされてしまい、キャリアアップも出世もできなくなってしまうのではと思っている人は多いかもしれません。

 しかし、時代は確実に変わっています。私の研修や講演で当たり前のように見かける男性たちの実態をご紹介することで、彼らの働き方に大きな変化が起きていることがわかるでしょう。

保育園に寄るので研修に10分遅れるのはわがままか

事務局40代後半男性Aさん「2日目の朝に遅れるなんて、そんなこと許されないぞ」

受講者30代半ば男性Bさん「妻もフルタイムで働いていて、朝、娘を保育園に送っていくのが僕の担当なんです。この研修受けるときに通学での受講申請をして認められました。2日目が9時スタートなら、遅れることはないのですが、8時30分スタートなので、保育園に朝一番に娘を連れていっても、ここに僕が着くのがどうしても8時40分になってしまいます。だから、10分だけ遅れることを許してほしいとお願いしているんです」

Aさん「母親じゃあるまいし、なんで君が保育園の送り迎えをする。奥さんにやってもらえ」

Bさん「妻もフルタイムで働いています。保育園からのお迎えは妻が担当です。夫婦で送迎を分担して子育てしながら働いているんです」

Aさん「それは君の家庭の事情だろ。そんな君の自分勝手の行動が通用すると思うのか?だいたい、講師の先生が困るだろう。先生、ちょっといいですか?」

 2日間の「モチベーション・リーダーシップ」研修の初日の朝、教室の前方で繰り広げられた小競り合いに、私は慌てて駆け寄りました。

Aさん「明日の朝10分遅刻するという者がいますが、そんな例外は認められませんよね?」

私「保育園に娘さんを送るので朝10分の遅れね。大丈夫よ。毎日やっているの。偉いわね。他のメンバーたちには、初日の振り返りとかやってもらうこともあるので、ちょうどあなたが来るくらいから2日目のコースが始まるわ。待っているから、慌てずに気を付けて来てね」

Bさん「ありがとうございます。娘を送り届けたら、できるだけ急いでここに来ます」

Aさん「先生、そんなわがままな行動を許していいんですか?」

私「彼はわがままを言っているわけではないと思います。私の研修が宿泊を前提にしているものだから、2日目のスタート時間が、通常の始業時間よりも30分早くなっています。通常の始業時間だったら、彼は遅刻するわけではありません。彼は仕事と子育てを両立させながら頑張っています。それを周りの者が応援しなくてどうしますか?」

Aさん「そんなこと言ったって、私の若いころは仕事よりもプライベートを優先するなんて許されませんでしたよ」

私「彼はプライベートを優先しているわけではありません。彼は奥さんのワークライフバランスを支え、そして自分のワークライフバランスも大切にしている。素敵な今時のイクメンといえます。あなたは年齢的に40代後半のようですね。奥さんは専業主婦で子育てを全て丸投げし、仕事一筋で生きてきたのかもしれません。自分自身の昭和時代の人生観や価値観を手放さないと、一緒に仕事をする若い部下たちを応援できませんよ」

 この事務局の男性は、逆に自分が私から注意されたことが非常に不本意という表情をしていました。彼は、その後2日目終了まで教室に来ることはありませんでした。